働き方改革関連法の成立で仕事はどう変わるか?:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
働き方改革関連法が可決・成立した。国会審議では「高度プロフェッショナル制度(高プロ制度)」の是非が主な争点となったが、同法案がカバーする範囲はもっと広い。法案の概要と施行後にどのような影響が及ぶのかについて考察する。
働き方改革関連法が6月29日、可決・成立した。国会審議では、高度な専門職を労働時間規制の対象から除外する「高度プロフェッショナル制度(高プロ制度)」の是非が主な争点となったが(関連記事)、同法案がカバーする範囲はもっと広い。法案の概要と施行後にどのような影響が及ぶのかについて考察する。
残業時間の上限規制は罰則付き
働き方改革関連法は1つの法律ではなく、労働基準法や労働契約法など合計8つの法律で構成されている。この中で労働者にとって特に重要なのは、(1)残業時間の上限規制、(2)高度プロフェッショナル制度、(3)同一労働同一賃金(関連記事)の3つだろう。
現行の労働基準法が定めている労働時間は「1日8時間、週40時間」となっている。この時間を超えて労働者を働かせることは違法だったが、これには例外規定が存在していた。企業と労働者が協定を結んだ場合に限り、法定労働時間を超えて仕事をさせることが可能となっており(いわゆる36協定)、この協定の存在が長時間残業の元凶と言われている。
厚生労働省では、36協定を結んだ場合でも、残業時間について「月45時間、年360時間」を限度にする目安を定めていたが、強制力がないため、現実にはあまり顧みられることはなかった。
今回、盛り込まれた残業時間の上限規制では「月45時間、年360時間」という基準が明確化された。繁忙期など、どうしても残業を行う必要がある場合においても、45時間を超えて残業できるのは6カ月までに制限され、年間の上限は720時間となる。これに加えて単月では100時間未満、複数月の平均では80時間未満(いずれも休日労働含む)という制限もある。
上限規制を超えて労働させた企業には罰則が適用されるので、この数字には法的な拘束力がある。これまでは、事実上、残業時間が青天井だったことを考えると、労働者にとっては大きな変化といってよいだろう。また、10日以上の年次有給休暇が付与されている労働者については、5日分の取得が義務付けられたので、有休が消化できないといったこともなくなるはずだ。
ただ、休日労働を含め月100時間の残業が可能という内容であり、100時間とは過労死の認定ラインとされている。すべての労働者にとって十分な水準とは言えないかもしれない。
ちなみに一部の職種については、上限規制の適用が除外されたり、適用時期の猶予が与えられたりする。新技術・新商品の研究開発業務には上限規制が適用されず、自動車運転、建設、医師に対する上限規制の適用は5年後となっている。
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