家電以外の商品を売り始めた家電量販店を悩ます「リベートの減少」:なぜかなくならない慣行(4/5 ページ)
家電量販店は少子化や家電市場の飽和を踏まえ、家電以外の商品の取り扱いを増やそうとしている。しかし、家電の販売額を減らすことは、リベートという収入の減少にもつながる。そもそもリベートとは何か? そしてなぜリベートという慣行が続いているのかを考察してみよう。
いまだに問題となるリベート
さて、メーカーは協賛金を払わないと、実質上は取引を継続できなくなってしまう場合がある。それは、独占禁止法違反の「優越的地位の濫用」となる。先に紹介した公正取引委員会の報告書が公表されてからだいぶ経過した現在でも、リベートのことはしばしば話題になる。18年3月には、アマゾンが販売した金額の1〜5%にあたる協力金を要請していたため、「優越的地位の濫用」にあたると問われる報道があった。
ところで、ビックカメラとヤマダ電機の最新決算を見てみよう。売上高比営業利益率を計算すると、いずれも連結ベースでヤマダ電機は2.4%(18年3月期)、ビックカメラは2.8%(17年8月期)だ。2%台だから、まだ満足するにはいたらないだろう。
そこで、さらに決算書を見てみると、ビックカメラは、営業外収入の欄に「協賛金」を記載している。
ビックカメラ: 2017年8月期決算短信では、「営業外収益」の項目に3億4000万円の「協賛金収入」がある。
また、本来の定義では、協賛金とイコールではないものの、ヤマダ電機のように仕入割引を加算する場合がある。
ヤマダ電機: 2018年3月期決算短信では、「営業外収益」の項目に43億1200万円の「仕入割引」がある。
この仕入割引とはなんだろうか。定義としては協賛金と異なるが、実質上はメーカーからの協賛金と同じように作用する。
この協賛金や仕入割引の大小や比率については論じない。ただ、いまだにリベートやリベートに類似したものが、決算を支えているのだ。
12年にビックカメラがコジマを吸収した際、販売数量の最大化が狙いだといわれた。販売数量と仕入数量が増えれば、その分、販促協力金や仕入割引の比率が上がるからだ。そして、さらなる低価格販売が可能となる。
しかし、それは逆にも作用する。家電の販売量が減っていけば、販促協力金や仕入割引の比率が下がり、これまでの方程式が逆にまわっていく。実際に、数年前の決算書を調べると、協賛金や仕入割引がかつてはさらに大きかったと確認できる。
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