ヤマダ電機とビックカメラ、“経営がうまい”のはどちらか:実は大きく異なる(1/4 ページ)
家電量販店業界の最大手であるヤマダ電機と2位のビックカメラ。実は両社は店舗の立地戦略だけでなく、多角化戦略でも大きく異なる戦略を打ち出している。「経営のうまさ」を示す指標で比較すると驚きの結果が見えてきた。
特集「数字で納得! あの企業が“負けた”理由」:
なぜあの企業は競合他社と差がついてしまったのか。知っているようで意外に知らない戦略の違いを「会社の数字」を用いながら比較する。
企業の勝ち負けは業績だけで判別できない。ある数字に注目することで、意外なところで明暗が分かれたケースも本特集で紹介する。
家電量販店業界で売上高1位のヤマダ電機と2位のビックカメラ。この両社は同じ家電量販店というカテゴリーにくくられるが、立地戦略と多角化戦略において大きな違いがある。そして、それが近年注目されている「経営のうまさ」を示す指標に大きな差を生んでいる。なぜ、明暗が分かれたのだろうか。
ヤマダ電機とビックカメラの出店戦略
ヤマダ電機の前身である「ヤマダ電化サービス」が創業したのは1973年。いわゆる「町の電気屋さん」だった。創業者の山田昇氏は祖業の地である群馬県を皮切りに新規出店を繰り返し、2005年に売上高は1兆円を超えた。
同社の急成長を支えたのは圧倒的な規模の追求だ。店舗数を背景にメーカーから大量に仕入れることで、安価に商品を提供できる。ヤマダ電機の国内直営店舗数は傘下のベスト電器などと合わせると935店だ(17年3月末時点)。
出店場所はいわゆる郊外が多い。近年、都市型駅前店の「LABI」も展開しているが、店舗数は全体からみるとわずかだ。
一方のビックカメラは1978年、池袋駅北口にカメラと関連商品の販売会社として創業した。前身は創業者の新井隆司氏(本名:新井隆二)が群馬県高崎市に設立した株式会社高崎DPセンターである。大都市の駅前に集中的に出店する戦略で成長してきた。ビックカメラの直営店は40店舗あるが、そのうちの8割近くが大都市圏(首都圏、愛知県、大阪府、福岡県)にある。近年は、郊外店舗が中心だったコジマを傘下に収めるなど、出店エリアを拡大している。
楽天証券経済研究所長の窪田真之氏は「インバウンド需要の恩恵を十分に受けられるのは都市型のビックカメラだ」と指摘する。
日本政府観光局によると、訪日外国人観光客数は17年に約2870万人と過去最高を更新。訪日外国人観光客による「爆買い」は落ち着いたといわれるが、家電量販店や百貨店にとっては存在感の大きい顧客になったことに変わりはない。
ビックカメラがインバウンド需要の恩恵を受けている一方で、ヤマダ電機は近年、不採算店舗の整理を進めている。15年のプレスリリースで構造改革の一環として「スクラップ&ビルドや業態店舗を含め46店舗の閉鎖を予定している」「今後は都市部と郊外で厳選して出店していく」と発表したことは、規模を追う戦略からの脱却を印象付けた。
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