ドンキはなぜここまで成長できたのか、そして何を目指しているのか:ビジネスモデルを徹底検証(3/4 ページ)
ドン・キホーテの快進撃が止まらない。29期連続の増収増益を達成する見込みであり、コンビニやスーパーが競ってそのノウハウを学ぼうとしている。ドンキの強さの秘密はどこにあるのか。そして、どんな進化をしようとしているのか。
深夜マーケットと訪日外国人需要の発見
もともと同社は「泥棒市場」として誕生した。そのときに発見した夜間市場が、インバウンド需要を取り込むまでになった。
外国人旅行者たちは、深夜営業の店舗にどんどん吸い寄せられる。それはまるで誘蛾灯にむらがる蛾のようでもある。外国人旅行者たちにとっては、夕食後が遊びの本番であるにもかかわらず、開いている店舗は飲食店しかない。
2014年の新免税制度開始以降、免税対象品が大幅に拡大しており、日本にやってくる外国人旅行者の半数はドンキを訪れるとさえいわれる。
ドンキは外国人旅行者に訴求する化粧品や医薬品の品ぞろえを充実させている。日本人にはなかなか理解できないが、中国では農村部で病院が不足しており、都会の総合病院は並ぶのに時間がかかる。さらに治療費用が高額になるとあって、医薬品の需要が高い。中国では「日本の薬は安全で、さらによく効く」と見られている。
ドンキは、一つの“エンターテインメント場”として機能しているだけでなく、旅行中にあまった小銭を使わせるUFOキャッチャーを設置するなど、万事抜かりがない。
非食品領域による食品領域の強化
また、ドンキはGMSを運営する長崎屋を傘下におさめ、同社のノウハウを活用して食品領域も充実させている。毎日、主婦層に寄ってもらうための店作りに取り組んでいるのだ。ユニーの例で説明したように、非食品分野の利益を、食品分野の競争力強化に使うのが目的だ。
ドラッグストアが食品を低価格・低利益で販売し、利ざやの大きい医薬品に誘導したように、ドンキはそのモデルを拡大し、スーパーからお客を吸い寄せている。17年に販売した500円台のボージョレ・ヌーボーは衝撃的だった。
同社は、非食品領域=日用品雑貨類の強化を続けている。4Kテレビ、タブレット、PCなどの黒物家電から、炊飯器やドライヤーといった白物家電まで、激安プライベートブランド(PB)商品が有名だ。それ以外には、寝具、衣料品も扱っている。さらに近年では、100円ショップならぬ、99円雑貨にまで手を広げている。しかも、99円といっても、意外に洗練されたデザインで女性が好みそうな商品群を用意しており、ぬいぐるみまで開発してしまうほどだ。その態度は「揺りかごから墓場まで」ではなく、「ロレックスからトイレットペーパーまで」と称するにふさわしい。
ちなみに、現状ではドンキの売り上げ構成比は食品が約35%の一方、非食品が約65%を占めている。粗利構成比でみると、非食品は約75%を占めており、ドンキは「非食品の利益で食品の価格競争力を強化し、来店客数を向上させ、売り上げ向上につなげる」としている。
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