家電以外の商品を売り始めた家電量販店を悩ます「リベートの減少」:なぜかなくならない慣行(1/5 ページ)
家電量販店は少子化や家電市場の飽和を踏まえ、家電以外の商品の取り扱いを増やそうとしている。しかし、家電の販売額を減らすことは、リベートという収入の減少にもつながる。そもそもリベートとは何か? そしてなぜリベートという慣行が続いているのかを考察してみよう。
数字で読み解く「もうけの仕組み」:
「あんなに暇そうなのに、どうしてあのお店はつぶれないのか」「こんなに安い価格で本当にやっていけるのか」――世の中には知っているようで知らない「もうけの仕組み」がたくさんある。身近な企業を例に利益構造を学び、ビジネスとお金のセンスを磨いていこう。
連載第1回:家電以外の商品を売り始めた家電量販店を悩ます「リベートの減少」
連載第2回:ドンキはなぜここまで成長できたのか、そして何を目指しているのか
連載第3回:いつも暇そうに新聞を読んでいる不動産屋はなぜベンツに乗っているのか
連載第4回:家賃が200万円もするのにスタバがもうかる理由
連載第5回:値上げをしたのに客数が増えた焼き肉店の謎
連載第6回:ワタミを救った「鶏肉」に外食チェーンが熱視線を送るワケ
先日、子どものおもちゃを購入しようと街に出た。Google マップでおもちゃ屋さんを探してもほとんど見つからないので、子どもに「アマゾンで買ってもいいか」と聞くと、実際に見てから買いたいという。
多くの読者も同じことをすると思うが、そんなときには家電量販店に行く。おもちゃだけでなく、ついでにお酒や雑誌などを買って帰る人もいるだろう。しかし、よく考えてみたら、このところ家電製品を買った記憶がほとんどない。家電量販店の売り上げは落ちていないのだろうか。
もちろんこれは個人的な話にすぎない。増え続ける訪日外国人観光客は家電量販店に足を運んでいるし、「少しでも家事にかける時間を短くしたい」と考える共働き世帯は高性能白物家電を買っている。いまでは、スマホと連動する家電があるほどである。
しかし、それらの明るいニュースがあるとはいえ、家電市場の飽和と少子化の進展により、家電量販店に明るい未来があるとは断言できない。今回は、“脱家電”を進める家電量販店の戦略と、悩ましいリベートの問題について考察してみたい。
飽和する家電市場
商業動態統計によると、家電大型専門店の商品販売額は4兆5311億円(2014年)から4兆3115億円(17年)にまで減少している。最新の決算を見ると、各社とも横ばいで推移するなか、ヤマダ電機は苦戦を強いられた。
かつてはテレビが家電量販店を支えていたが、液晶テレビのない家はないといっていいほどにまでに普及した。それに、中国の関連メーカーが増産・設備増強に乗り出している。液晶テレビについては、“供給過剰”の状態にあるといってよく、新製品が出てもしばらくすると価格は下落する。しかし、メーカー各社は収益確保のために減産には積極的ではなく、価格下落のチキンレースに突入している。
家電量販店が苦境に陥っているのは、アマゾンに代表されるネット企業の影響も少なくない。例えば、ヤマダ電機はリアル店舗で家電を販売するのが強みであるが、そのぶん、ネット事業が遅れた側面は否定できない。家電をアマゾンや楽天などのサイトから買った経験のある人は多いだろうが、ヤマダ電機のサイトからどれだけの人が購入した経験があるだろうか。
関連記事
- ヨドバシの接客力を支える「すごい教育」
社員の接客レベルや商品知識の深さが評判のヨドバシカメラ。高い接客力を支えているのは社内の教育体制にあった。いったい、どんなことをしているのか? - ヤマダ電機とビックカメラ、“経営がうまい”のはどちらか
家電量販店業界の最大手であるヤマダ電機と2位のビックカメラ。実は両社は店舗の立地戦略だけでなく、多角化戦略でも大きく異なる戦略を打ち出している。「経営のうまさ」を示す指標で比較すると驚きの結果が見えてきた。 - 急成長する「伝説のすた丼屋」 模倣を難しくしている独自の調理法と秘伝のタレ
ボリューム満点の「すた丼」を提供する「伝説のすた丼屋」が急成長している。かつては学生街を中心に出店していたが、商業施設内やロードサイドにも進出するようになった。すた丼は見た目が豪快だが味は繊細で、模倣が難しい料理だ。独自のビジネスモデルとすた丼の調理方法に迫る。 - スーパーでよく聞く「ポポーポポポポ」 18年たっても愛される理由
スーパーの売り場などでよく聞く「ポポーポポポポ」という曲。それを流しているのは「呼び込み君」という小型の機器だ。2000年に発売され、18年目を迎える呼び込み君が使われ続けるのはなぜか。製造販売する群馬電機に聞いた。 - 行列ができるまでに復活! 「東京チカラめし」の反転攻勢
かつて急成長したが、失速するのも早かった東京チカラめし。現在は全10店を営業するにとどまるが、実は店舗に行列ができるまでに“復活”しているという。再成長できるかどうか、検証する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.