YouTuber教育プログラムで子どもたちに教えている、動画の撮り方より大切なこと:私が起業した理由(2/4 ページ)
子どもたちのやりたいことを叶えたいという思いから「YouTuber Academy」の運営を始めたFULMA代表の齊藤涼太郎さん。彼が考える、子どもたちに身に付けてほしい、変化の激しい時代を生き抜くのに必要な力とは何だろうか?
これからの時代を生き抜くために必要な力
――YouTuber Academyを運営する上で大切にしていることは?
カリキュラムは学びの基礎である「守・破・離」を基本に組み立てています。
はじめに子どもたちはお手本動画を参考にしながら、動画制作の手段である撮影や編集を学びます。最終的には、それぞれの子どもたちが作りたいオリジナル動画を作成するのですが、それらのカリキュラムの中で、今後もかかわっていくであろうネット上での身の守り方や、最新のITリテラシーなど、基本的なことはひと通り教えます。ただYouTuberになるためのスキルを教えることだけが、授業の目的ではありません。
僕たちはそれらの過程の中で、子どもたちにこれからの世の中を生き抜くために必要になる、普遍的な力を身に付けてほしいのです。そのために、(1)子どもたちが考えた企画、(2)好きが育む主体性、(3)“良さ”より“らしさ”、(4)創造が育む自信、これら4つのポイントを意識して運営しています。
まずアカデミーでは、子どもたち自身に企画を考えてもらいます。例えば、ゲーム動画がやりたいのであれば、そこに教育面での付加価値をつけて、実際にゲーム動画を作る年間カリキュラムを親御さんに提案し、実施します。
なぜなら、子どもは好きなことには主体的に取り組むからです。もちろん、ゲームと聞いて眉をひそめる親御さんもいますが、子どもたちが好きなことに取り組む中で、彼らにとって押し付けにならない学びを得られる環境を最大限整えるようにしています。
なおかつ、出来上がった作品に対して、大人の基準で良しあしを判断しないように気を付けています。親御さんが満足することを優先して、ある程度のクオリティを担保したマニュアルに沿った動画制作カリキュラムを進める方が、オペレーション的には簡単です。しかし、それだと同じような動画を作る子どもばかりが育ってしまい、主体性が育ちません。そればかりか、子どもたちのやる気を削いでしまいかねません。そうならないためにも良さよりらしさを大切にすることを心掛けています。
好きなことに主体的に取り組み、何かを作り上げることで、子どもたちは初めて心からの達成感や、何かを自分で作り上げたという自信を得ることができます。これこそが創造が育む自信です。僕はこうやって育まれた自信こそが、子どもたちがその後の人生を生き抜く力になると思っています。
例えば、僕自身は、両親に「あなたの人生だから」と、すごく自由に放任主義で育ててもらったことで、チャレンジも失敗も早い段階から数多く経験することができました。その中で、今の事業の構想の出発点となった「子どもが子どものために企画するキャンプのボランティア団体」も立ち上げたのです。そして、そこで見た子どもたちの楽しそうな笑顔から、ほかの何にも代え難い大きな達成感を得ることができました。そのような、自分が自由に企画したことで得られた成功体験が、今につながる自信を作ってくれたのだと実感しています。
動画の編集スキルなんて、極論を言えばどうでもいいんです。僕らはこのアカデミーを通じて普遍的な生きる力、「自信」を育みたいと思っているのです。
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