家賃が200万円もするのにスタバがもうかる理由:上場時の決算書を分析(2/4 ページ)
スタバは大都市の一等地に多くの店舗を構えている。1杯数百円のコーヒーを販売しており、店に長居するお客も多い。家賃が200万円以上するような場所でも利益が出せる秘密とは?
スタバの決算書はどうなっている?
それでは、スターバックスコーヒージャパンの14年3月期の決算(非連結)を確認してみると、F=原価率は28.3%、L=人件費率は26.7%となっています。つまりFL比率でちょうど55%、まさに飲食店のお手本のような業態です。先ほど説明したようにFLR比率で70%に収めるのが一般的な飲食店の経営指標ですので、FL比率が55%である同社は理論上では賃料に15%ものコストをかけられます。
では同社の1店舗当りの売り上げはどのくらいあるのでしょうか? 14年3月期の売上高は1256億円となっています。この段階での店舗数が1034店舗ですから、単純計算でも1店舗平均で年間1億2000万円、月商1000万円の売り上げがあるということです。 しかし、この1034店舗には店舗での売り上げが全て計上されないライセンス店舗が含まれていますので、実際にはもっと1店舗当りの売り上げが高いということになります。
賃料が高くても利益が出る理由
私が行った調査では、好立地の店舗で1坪当りの月商は40万円を超えています。つまり、50坪程度のお店では月商2000万円を売り上げることになります。続いて賃料に関してですが、これは地域や物件の階数などによって大きく変わります。首都圏の店舗賃料相場を掲載している「店舗相場TOWN」によると、東京都内における1階の店舗賃料相場は1カ月、1坪当り2万6000円程度です。神奈川県だと1万7000円程度、千葉県だと1万3000円程度となっています。当然ですがさらに細かいエリアや階数、駅前、郊外などの諸条件によって賃料相場は大きく変わります。賃料が高いイメージが定着している銀座がある東京都中央区だと、店舗賃料相場は平均でも4万円程度、最も高い場所では20万円を超えます。
例えば好立地で坪4万円の賃料の場所にスタバを出店した場合、50坪で賃料が月200万円であったとしても、月商が2000万円(50坪×1坪月商40万円)であればR比率=賃料比率は10%となります。先ほど説明したように同社のFL比率は優良店指標の55%でしたので、賃料の10%を足してもFRL比率は65%となり、優秀な利益を出すことが可能となります。
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