「昭和の喫茶店」が廃れる一方で「ルノアール」が好調な理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/5 ページ)
低価格が武器のコーヒーチェーンが伸びる一方で、昔ながらの「昭和の喫茶店」が次々と閉店を余儀なくされている。喫茶店としては割高な料金でゆったりと過ごせる椅子やテーブルが特徴の「喫茶室ルノアール」が好調だというが、その理由とは?
首都圏のビジネスパーソンがほっと一息つける都会のオアシス「喫茶室ルノアール」を経営する銀座ルノアールが、8年連続で過去最高の売上高を更新する見通しだ。
ルノアールのコーヒーは1杯600円前後と、喫茶店にしては割高だ。にもかかわらず、銀座ルノアールは2017年3月期まで緩やかに売上高が伸びている。08年に56億9300万円だったが、17年には76億4600万円と、過去10年で3割ほど増えている。
18年も第3四半期までの売上高は58億4100万円で、前年同期の57億2900万円に対して2%ほど伸びた。また、経常利益は第3四半期までで3億6800万円となっているが、前年通期の3億2700万円をすでに上回る好調ぶりだ。
今回は、利益が出にくく継続するのが難しいとされる喫茶ビジネスで、喫茶室ルノアールが第一線であり続けられる理由を探っていきたい。
人気が再燃している理由
店舗数は88店。グループ全体、他のブランドを含めて119店を展開している。昭和の雰囲気が漂う老舗喫茶店が低価格・セルフサービスの店に押されてどんどん廃れていっても、ルノアールは根強い支持で勢力を維持し、今また人気が再燃している感がある。
ルノアールは「名画に恥じない喫茶店」のコンセプト通り、まるで画廊に居るようなゆったりした静かな雰囲気があって、接客がていねいで居心地が良い。これは低価格喫茶チェーンにはないものだ。
大半の店でWi-Fiと無料で使える電源が整備されている。3時間で1000円くらいのネットカフェに比べれば、モバイルで仕事をする人にとってはコストパフォーマンスが良好。コーヒーを飲み終わったあとの絶妙なタイミングで運ばれてくる無料のお茶サービスもあり、時間を気にせず座っていられる。
仕事の合間に頭を整理したり、本を読んだりするために来店する常連客も多く、新聞も無料で読める。つまり、一種のサテライト・オフィス兼休憩所として気軽に使える便利さがある。
また、打ち合わせや商談によく使われることから、貸会議室を併設している店舗もあるほどだ。オフィスの延長線上で愛用されているのも、ルノアールの強みである。
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