ブルーボトルコーヒーは店の裏で何をしているのか:水曜インタビュー劇場(カフェ公演)(1/5 ページ)
米国発の喫茶店「ブルーボトルコーヒー」が日本に上陸して、1年が経過した。カフェといえばテクノロジーの世界とはあまり縁がないように感じるが、実は……。
水曜インタビュー劇場(カフェ公演):
「コーヒー界のアップル」――。ご存じの方も多いと思うが、米国発のカフェ「ブルーボトルコーヒー」はこのように呼ばれている。創業者が自身で買い付けてきたコーヒー豆を自宅の裏庭にあるガレージで焙煎(ばいせん)し、マーケットで販売していたことからこのように呼ばれているそうだ。
そんな黒船のようなカフェが、2015年2月6日に初上陸。その日の東京の気温は、最高が12度、最低が0度。コート、マフラー、手袋が手放せない中にもかかわらず、一杯のコーヒーを求めて黒山の人だかりができていたのである。ある人は5時間も待ったとか。
そんなブルーボトルコーヒーも上陸してから1年が経ったが、いまはどうなっているのか。さすがに行列はできていないだろうなあと思って、青山と清澄白河の店を偵察したところ、平日にもかかわらずいずれもほぼ満員。一杯のコーヒーを求めて、数十人待ちのときもあったのだ。
都会でコーヒーを飲もうと思えば、選択肢はたくさんある。カフェチェーンだけでなく、喫茶店、ファストフード、ファミリーレストラン、コンビニ、自販機など。ライバルはたくさんある中で、なぜブルーボトルコーヒーはいまも多くの人から支持されているのだろうか。
前編ではこの1年を振り返りながら、行列ができた理由について、同社の井川沙紀取締役に分析してもらった。後編では店内の裏でどんなことが行われているのか。カフェの裏側に迫った。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。
→後編、本記事
“テクノロジーのチカラ”を使っている
土肥: 前回、井川さんにコーヒーが好きですか? と尋ねたところ「いえ、好きじゃないんですよ」と答えられました。どういう意味なのかなあと思って聞いてみると、以前は「好き」と言えたけれども、いまは周囲に“コーヒー通”が多いので、気軽に「好き」と言えなくなったとか。
そのような環境の中で働いているので、会社で「消費者に一番近い立場の人間」と言っているそうですね。そんな井川さんにご質問です。カフェといえば「コーヒーがおいしい」「オシャレな雰囲気」「ゆったりとした時間を過ごすことができる」といったイメージがありますが、実際に「中」で働いてみてどのような印象を受けていますか?
井川: ご指摘の通り、「カフェ=おいしいコーヒーを飲むことができる」といったイメージがあるかもしれませんが、実はお客さんが見えないところで“テクノロジーのチカラ”も結構使っているんですよ。
土肥: ほー。例えば?
井川: 私たちはコーヒー豆を都度焙煎しているので、どのくらい発注したらいいのかって難しいんですよね。不足してもいけませんし、余ってもいけません。発注量に対して、どのくらい売れるのか。その精度をどのようにしたら高めることができるのか。そんな研究を日々行っているんです。
詳しいことはのちほどご説明するとして、「カフェ」といえばベタベタな店舗ビジネスを想像される人も多いかもしれませんが、実はテクノロジーの技術が詰まっているんですよ。
多くの飲食店は売上管理システムを導入されていると思うのですが、既存のモノだとどうしてもスピードが遅くなる。こちらが「ここが使いにくいからこのようにしてほしい」と伝えても、それが使えるようになるのに時間がかかってしまう。しかし、当社では自社でエンジニアチームを抱えているので、チームのメンバーと店長は密に連絡をとりあっているんですよね。「このようにしたら使いやすいよ」「いやいや、このようにしたほうが見やすいよ」といった感じで。
土肥: ふむふむ。
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