「決して安くない」のに、なぜ成城石井で買ってしまうのか?:ノッている会社は、ここまでやっている!(1/7 ページ)
総合スーパーが苦戦している中で、業績好調の企業がある。都市部を中心に展開する成城石井だ。店内には珍しい商品がズラリと並んでいるが、なぜそのような品ぞろえができるのか。『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』の著者・上阪徹氏によると……。
総合スーパーの苦境が聞こえて久しい。そんな中、業績好調な異色のスーパーがある。首都圏、名古屋、大阪、神戸など都市部を中心に展開する成城石井だ。決算の詳細は公開されていないが、2014年12月期の売上高は630億円を超える水準。2015年12月期も含めて、今後さらなる伸びが見込まれているが、驚くべきは2009年の売上高が400億円台だったこと。不況と言われるこのご時世に、5年で約200億円、つまり売り上げが1.5倍近いスケールになっているのである。
店舗数も急拡大した。1994年には4店舗しかなかったが、10年後の2004年には30数店舗に。さらに2014年には110数店舗へ。直近の店舗数は135店舗にのぼる(2016年1月31日現在)。しかも路面店、デパ地下、ショッピングセンターテナント、オフィスビル、コンビニ跡地など、店舗形態が多彩であることも大きな特徴。サイズも7.4坪の小型店から190坪の大型店まである。
成城石井をめぐっては、2014年、ファンドが保有していた株式の売却をめぐって、大手小売りが争奪戦を繰り広げたことは記憶に新しい。成長力に加え、通常のスーパーでは2〜3%といわれる営業利益率が6〜8%程度とみられる収益力の高さも大きな魅力だったようである。最終的にはローソンの傘下に入ったが、その成長力はさらに加速しているようだ。
成城石井を端的にいえば、高価格帯の商品を中心に扱う高級スーパー。デフレの時代が長く続き、節約志向がすっかり染みついた日本では、むしろ時代に逆行している業態のようにも思える。
では、なぜ成城石井が受け入れられているのか。私は拙著『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』(あさ出版)の取材プロセスで、その理由をはっきりと理解することになった。
成城石井は、単なる「高級スーパー」ではまったくないのである。圧倒的ともいえる顧客主義を貫いた結果、今の姿になったスーパーなのだ。
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