ブルーボトルコーヒーは店の裏で何をしているのか:水曜インタビュー劇場(カフェ公演)(2/5 ページ)
米国発の喫茶店「ブルーボトルコーヒー」が日本に上陸して、1年が経過した。カフェといえばテクノロジーの世界とはあまり縁がないように感じるが、実は……。
「技術力で時間を買う」という考え方
井川: このほかに、店舗の売り上げを時間別に見ることができるようになったり、商品別に見ることができるようになったり、それをグラフにして分かりやすく見ることができるようになったり。先ほども申し上げましたが、エンジニアチームと店長が密に連絡をとりあっているので、「ああしてほしい」「こうしてほしい」といったことが、スピーディーに搭載されるんですよね。これには驚きました。
カフェなのに、なぜテクノロジーにチカラを入れているのか。当社の考え方のひとつに「技術力で時間を買う」というものがあるんです。店長がデスクに向かって「ああでもない、こうでもない」と何時間も考えていてはダメ。「この情報が欲しい」ということであれば、すぐにそれを手にできる。店長がデスクに向かっている時間が短くなれば、その分お客さんと向き合う時間が長くなりますよね。これが大切だと思っているんですよ。
土肥: 店長ってデスクに向かってどのような仕事をしているのでしょうか。
井川: 例えば、来月のシフトを組むときに、今月の売り上げと人件費の比率を見なければいけません。そうしたときに、店長が「ああでもない、こうでもない」と作業に時間がかかっていると店に出る時間が短くなってしまいます。しかし、当社のシステムを使えば、店舗別やエリア別に売り上げと人件費の比率を簡単に見ることができます。
あと、カフェを運営する上で最も難しいことは何か。それは豆の発注量なんですよ。ブルーボトルコーヒーではコーヒー豆の袋売りをしていて、各店舗の店長は焙煎チームに「今週はこれだけの豆をください」と発注しなければいけないのですが、これが難しい。
土肥: どういうことですか?
井川: 袋売りの豆は「焙煎してから48時間以内のモノでなければいけない」というルールがあるんです。店長は「明日はコーヒー豆が100袋売れる」と予測しても、実際は10個しか売れないときがある。そうすると、残りの90袋はどうするのか。豆として売っていたモノを、店舗で提供するコーヒー用に切り替えなければいけません。
土肥: “売れ残りのコーヒー”を飲まされているようで、なんだか嫌だなあ。
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