値上げをしたのに客数が増えた焼き肉店の謎:どんなからくりなのか(3/4 ページ)
牛肉の仕入れ値や人件費の高騰に苦しむ焼き肉店が増えている。あるお店では耐え切れずに値上げをしたところ、客数は減るどころか逆に増えたという。焼き肉店をケースに、失敗する値上げ戦略と成功する値上げ戦略の違いを探っていく。
失敗しない値上げのもう一つのポイントは?
(2): コストパフォーマンスを高める
皆さんが外食をして「このお店高かったな〜」「もう二度と行きたくないな〜」と感じるのはどのような理由からでしょうか?
「事前にネットなどで見ていた情報より高かった」
「以前より会計金額が高かった」
「3000円くらいで済ませたかったけど、実際に会計をしたら4000円だった」
確かに、こうした会計金額に起因する不満足もあると思いますが、実はそれ以外の不満足を感じていることの方が多くありませんか? 例えば
「ドリンクをオーダーしてもなかなか持ってきてくれなかった」
「頼んだ料理の量が少なかった」
「店が汚かった」
「店員の態度が悪かった」
といった具合です。実は、価格以外の多くの部分がそのお店を判断する基準となっており、最終的にそのお店に支払った金額と満足度をてんびんにかけて、皆さんはそのお店を評価しているのです。これはコストパフォーマンス(CP)と言い換える事も可能で、次のような数式で表せます。
コストパフォーマンス(CP)=付加価値/価格
無意識にコストパフォーマンスを判断している
例えば、皆さんがご飯を食べに行ったA店の価格が「1」で、皆さんが感じたそのお店の付加価値が「3」だった場合、皆さんにとってA店のCPは「3」となります。
一方で別のB店で皆さんがA店の2倍の価格「2」を支払ったとしても、皆さんが感じたお店の付加価値が「8」だった場合、皆さんにとってB店のCPは「4」となり、値段は倍するけどB店の方がCP=満足度が高いということになります。
これを値上げ戦略に置き換えると「多少値上げをされても、お店の付加価値が高まれば満足度は落ちず再来店につながる」ということになります。では実際に皆さんはどのような項目で日頃から飲食店の付加価値を評価しているのでしょうか?
なかなか自分自身では気付かないと思いますが、実は皆さんは無意識のうちに今から説明する8つの付加価値要素で飲食店を評価しています。さらに、この付加価値は大きく分けると「戦略的付加価値要素」と「戦術的付加価値要素」と「戦闘的付加価値要素」に分けられます。
戦略的付加価値要素とは既にお店に備わっている付加価値で、急に高めることが難しい付加価値要素となります。一方で戦術的付加価値要素とは1〜2カ月程度あれば高めることが可能な付加価値要素となります。戦闘的付加価値要素とは、スタッフのモチベーション次第では今日からでも高められる付加価値要素となります。
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