値上げをしたのに客数が増えた焼き肉店の謎:どんなからくりなのか(4/4 ページ)
牛肉の仕入れ値や人件費の高騰に苦しむ焼き肉店が増えている。あるお店では耐え切れずに値上げをしたところ、客数は減るどころか逆に増えたという。焼き肉店をケースに、失敗する値上げ戦略と成功する値上げ戦略の違いを探っていく。
コストパフォーマンスの具体的な中身とは?
【戦略的付加価値要素】
(1)立地力=家から近い、職場から近い、駅から近い、車で行きやすい
(2)環境力=席数が多い、個室がある、店がキレイ、子連れで行きやすい
(3)ブランド力=全国的な有名チェーン、地元の老舗、小さい頃から通っている
【戦術的付加価値要素】
(4)商品力=素材が良い、SNS映えする、おいしそうに見える
(5)販促力=雑誌などで見かけた、割引クーポンが届いた、
(6)価格力=自分の予算に合っている、いくら食べても値段が一緒(食べ放題)、他店と比べて安い
【戦闘的付加価値要素】
(7)接客力=笑顔が良い、所作が丁寧、気遣いができる
(8)固定客化力=来店ポイントがたまる、常連としての優越感が得られる
焼き肉店が実施した戦略とは?
皆さんがお気に入りのお店をこの8つの付加価値要素に照らし合わせてみてください。どうでしょう? 皆さんはどの部分でそのお店を評価していますか?
この焼き肉店では(4)の商品力強化に取り組みました。都心部にあり若いカップルや女性の顧客が多い焼き肉店だったということもあり、今の時流でもあるSNS映えする名物メニュー(黒毛和牛の盛り合わせ)を投入しました。SNS映えする名物メニューとは、他店と比べ圧倒的なボリュームがあり、見た目が華やかで美しく、人に言いたくなる高級感(シェアしたくなる高級食材)がある商品です。こちらの商品は高単価にもかかわらず、来店客の多くが頼む看板メニューとなっています。実際に客単価もアップしましたが、客数は増え続けています。
このように正しい戦略を実行すれば、客数を減らさずに値上げをすることも可能です。
著者プロフィール
三ツ井創太郎
株式会社スリーウェルマネジメント代表取締役。大学卒業と同時に東京の飲食企業にて店長等を歴任後、業態開発、FC本部構築などを10年以上経験。その後、東証一部上場のコンサルティング会社である株式会社船井総研に入社。飲食部門のチームリーダーとして中小企業から大手上場外食チェーンまで幅広いクライアントに対して経営支援を行う。2016年に飲食店に特化したコンサルティング会社である株式会社スリーウェルマネジメント設立。代表コンサルタントとして日本全国の飲食企業に経営支援を行う傍ら、日本フードビジネス経営協会の理事長として店長、幹部育成等も行っている。著書の「飲食店経営“人の問題”を解決する33の法則(DOBOOK)」はアマゾン外食本ランキングの1位を獲得。飲食店経営者の為になるブログを毎日更新中。
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