箱根に100億円投資、小田急が挑む「国際観光地競争」:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/6 ページ)
小田急箱根HDは、総額100億円を超える大型投資を発表。目玉は新型観光船だ。2020年に向けて「世界の箱根」を盛り上げていく。一方で課題もあって……。
ゴージャスな新型海賊船
新型「箱根海賊船」の名称は未定で、2019年2月の進水式で命名される予定。全長約35メートル、約319トン、定員541人(うち特別船室89人)。デザイン設計はドーンデザイン研究所代表の水戸岡鋭治氏。「心ときめくクルーズ」をコンセプトとし、内装に木材を使い、調度品もこだわってクラシック感と上質のリゾート体験を演出するという。船体色は黄金というから、かなりゴージャスだ。
箱根で運航する他の海賊船と比較すると、13年建造の大型船「ロワイヤルII」より少し大きく、定員はやや少ない。船室は少しゆったりした感じになると思われる。現役最古船「バーサ」の定員は650人で、新造船と入れ替わりに退役予定だ。19年には量より質の観光船が3隻そろう形になる。
水戸岡氏はJR九州をはじめとした鉄道車両デザインの巨匠で、箱根地域の進出は初。富士急行、伊豆急行に続いて、小田急グループの箱根観光船を手掛けることで、富士・箱根・伊豆を制覇することになる。
小田急グループは、ロマンスカーや大山ケーブル、箱根登山電車のデザインで、建築家の岡部憲明氏を起用してきた。水戸岡氏の起用については、16年の新造船決定の際に、JR九州の「ななつ星in九州」のコンセプトを取り入れたいという要望があったからだという。
小田急電鉄における岡部氏のデザインは、ガラスと金属による未来感と機能美が特徴。岡部氏の作品ではないけれども、箱根のケーブルカーやロープウェイも未来感がある。水戸岡氏は木材を使い、クラシカルで、異世界を訪れたような意外性があるデザインを生み出すのが得意技だ。小田急で箱根に行き、新しい海賊船に乗れば、デザインの巨匠の競演を楽しめる。
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