箱根に100億円投資、小田急が挑む「国際観光地競争」:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)
小田急箱根HDは、総額100億円を超える大型投資を発表。目玉は新型観光船だ。2020年に向けて「世界の箱根」を盛り上げていく。一方で課題もあって……。
ロープウェイのゴンドラは新型に
箱根ロープウェイは1960年に全線開業した。早雲山駅〜大涌谷駅、大涌谷駅〜姥子駅〜桃源台駅の2区間に分かれて運行している。前者は2002年、後者は07年に装置を全て架け替えて、2本のローブでぶら下がるため安全性の高いフニテル式を採用した。ゴンドラはスイスのCWA製だ。定員18人で、早雲山駅〜大涌谷駅間に20台、大涌谷駅〜姥子駅〜桃源台駅に30台を配備する。
今回の投資では早雲山駅〜大涌谷駅の20台を新型ゴンドラに入れ替える。19年で交換とは、他のローブウェイに比べて早いという印象を受けたが、火山ガスの影響で経年劣化が早いための安全策とのことだ。
新しいゴンドラもスイスCWA社の「TARIS」という最新型で、日本では初の導入になる。定員は在来型と変わらないけれども、室内面積は若干広くなり、ガラス面が拡大されて眺望が良くなる。
現在のゴンドラは片開き扉2枚で、扉の間に窓があり独立している。新型では両開き扉となって扉の開口部が大きくなる。訪日観光客は荷物が大きいため、扉を広く開けることでスムーズな乗降になる。なお、時期は未定ながら、大涌谷駅〜姥子駅〜桃源台駅の30台も更新するという。
ケーブルカーとロープウェイの結節点となる早雲山駅は、現在はそれぞれの駅舎が隣接する形だ。乗り換えは建物間をつなぐ細い通路だった。新たな施策として、この駅を改築し広いコンコースを設ける。2階には相模湾を見渡すテラス席や足湯を設ける。単なる乗換駅ではなく、いったん立ち止まって楽しめる構造とする。ケーブルカーとロープウェイの輸送力には差があり、観光シーズンのピークになると混雑する。その混雑を和らげるために、待ち時間を楽しく演出しようというわけだ。
路線バスは約50台を投入して、純増と既存車両との入れ替えを実施する。バスの車内には大型の荷物置き場を設置して、海外からの宿泊旅行客に配慮する。その一方で、「手ぶらで観光」を推進するため、軽トラックによる「箱根キャリーサービス」の車両を増やす。このサービスは海外旅行客向けガイドブックなどでも紹介されており、利用者が増えているという。重い荷物をバスやロープウェイに乗せるよりも合理的だ。
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