「1カ月の夏休み」は夢? 日本人の“有給の取り方”がズレている、歴史的背景:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/5 ページ)
月曜を午前半休にする「シャイニングマンデー」。経産省内で検討していると報じられたが、そんな取り組みは「無駄」。日本人は、世界では当たり前の「有給休暇をまとめて取る」こともできていないからだ。なぜできないのか。歴史をさかのぼると……。
「やむにやまれぬ事情」でつくった“おかしな制度”
私は毎年この時期になると「フランス人になりたい」と思うのですが、日本ってとことん遅れている。そうです。分割取得という発想は「戦後のやむなき事情」で生まれたのに、今なお、それを引きずっているのです。
日本で1日の労働時間や有給休暇などの労働基準を定めた「労働基準法」が作られたときの日本はとにかく貧しく、休んでいる暇などありませんでした。
それでも「世界に追い付きたい」との願いを込めて作られたのが、労働基準法です。
産業革命以降、欧州では長時間労働が蔓延し、労働者の間で過労が原因と思われる心身の不調が多発していました。それを撲滅すべく「1日8時間にしよう!」「1週間に40時間にしよう!」「週休とは別に、年次休暇を作ろう!」と権利を一つ一つ積み上げてきました。
その欧州の「労働者は奴隷ではない」というメッセージを、戦後の日本の役人たちは真摯(しんし)に受け止め、それまで1日10時間労働だったのを改め、「8時間労働」に短縮。「有給休暇も入れよう!」と意気込みました。
しかしながら「まとめて取るのが大原則」とする年次有給休暇を、敗戦の焼け野原で戦後復興中の日本がそのまま受け入れるのは到底ムリ。そこで年次有給休暇については、「やむにやまれぬ事情で、1日単位の分割取得というおかしな制度をあえて導入した」のです。
つまり、“やむにやまれぬ事情”がない今、“おかしな制度”は、“おかしくない制度”に戻すべき。「有給休暇はまとめて取るもの」と正すべきですが、そういった声は一向に聞こえてきません。
今の日本は、まだ戦後復興期にあるのでしょうか? いまだに世界についていけない、極貧の国なのか? やむにやまれぬ事情で“おかしな制度”を作った先人たちは、今の「日本」を見て、さぞかしがっかりするのではないでしょうか。
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