「1カ月の夏休み」は夢? 日本人の“有給の取り方”がズレている、歴史的背景:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/5 ページ)
月曜を午前半休にする「シャイニングマンデー」。経産省内で検討していると報じられたが、そんな取り組みは「無駄」。日本人は、世界では当たり前の「有給休暇をまとめて取る」こともできていないからだ。なぜできないのか。歴史をさかのぼると……。
フランスから広まった「もっと休め!」スローガン
実は100年前のフランス人は、今の日本人同様、長時間労働で過労死する人も多かったといわれています。
そんなフランスで休暇が充実したきっかけは、ある政治家の大英断です。
レオン・ブルム氏。3度にわたって首相を務めたフランスの政治家で、1936年に成立したフランス人民戦線内閣の首班を務めた人物として知られています。
当時フランスでは、大戦後に大恐慌の痛手から立ち直ることができず、経済は低迷し、街には失業者があふれていました。そこでレオン・ブルム内閣は、長引く不況に対して「もっと働け!」ではなく「もっと休め!」と号令をかけることを決断したのです。
しかし、彼の労働政策は大炎上。
「不況時に『もっと休め!』とは許せん」と有識者から大バッシングを受け、「ブルムの実験」とやゆされました。
しかし、ブルム氏はいかなる反発にもぶれることなく、週40時間労働制を推し進め、2週間の有給休暇を保証するマティニョン法(通称「バカンス法」)を制定したのです。
すると……、余暇が増えたことで、フランスではサービス産業が大きく成長し、内需主導型経済への脱皮を果たすとともに雇用も拡大。「もっと休め!」政策は、経済の回復に大きな役割を果たし、「もっと休め!」というブルム氏のスローガンはその他の欧州の国々にも広がりました。
フランスのバカンス法では、年5週間の有給休暇を取得する権利が労働者に与えられています。しかも、労働者の連続休暇取得を雇用主の責任としているため、「取りづらくて取れない」なんて事態はめったに起こりません。
雇用主には毎年3月1日までに従業員代表に対し、有給休暇取得計画のガイドラインを報告する義務があり、万が一取得できなかった場合は、退職時に「有給休暇手当」として支払う義務が課せられているのです。また、労働者の都合で取れなかった場合には、「休暇積立口座制度」を使って積み立てることもできます。
休暇積立口座制度とは、最大で年間22日の有給休暇を積み立てることができ、原則2カ月以上の長期休暇(サバティカル休暇)取得の際に、給与補償として充てることができる制度です。
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