ドンキの圧縮陳列とPOP洪水を生み出した「泥棒市場」:ドンキの源流を探る(1/3 ページ)
「権限移譲」「圧縮陳列」「POP洪水」「迷路」――ドンキの強さを表すキーワードはいくつかあるが、これらはどのようにして誕生したのだろうか。創業者である安田隆夫氏の自伝からドンキの“源流”を読み解いていく。
ドンキホーテホールディングス(HD)の成長が止まらない。8月10日に公表された2018年6月期連結決算では売上高9415億円、営業利益515億円と29期連続の増収増益を達成した。
「権限移譲」「圧縮陳列」「POP洪水」「迷路」――広く知られるようになったドンキの店舗やビジネスモデルの特徴は、どのようにして生まれたのだろうか。その源流を知ることで、好調なドンキの強みをより深く理解できるだろう。
ドンキの創業者である安田隆夫氏はドンキホーテHD会長兼CEOを退任した15年に『安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生』(文藝春秋刊)を上梓している。ここには、安田氏が歩んできた人生と、ドンキが成長してきた軌跡が描かれている。
圧縮陳列とPOP洪水とは
ドンキの特徴としてよく知られているものに圧縮陳列とPOP洪水がある。
圧縮陳列とは、商品を天井に届きそうなくらい高く、そして高密度に陳列する手法だ。小売業界では、商品を整理整頓し、どこに何があるのかお客が分かりやすいように陳列するのがセオリーだが、それとは真逆の手法となる。商品の量でお客を圧倒するだけでなく、掘り出し物がないかどうか自分で探す楽しみも提供できる。
POP洪水とは、手書きのPOPをあちこちに貼り付けることで、お客の購買意欲を刺激するものだ。ドンキの店舗には「POP職人」と呼ばれる従業員がおり、特徴的なPOPを店舗で手書きしている。ドンキに限らず、勢いのある小売りチェーンはPOPの作成に力を注いでいる。例えば、ヨドバシカメラではメーカーから提供された試供品やポスターに加え、商品の特徴を伝えるPOPを各店舗で従業員が作成することで、売り場の競争力を向上させている。
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