自動車メーカー「不正」のケース分析:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)
マツダ、スズキ、ヤマハ発動機の3社が排出ガス抜き取り検査についての調査結果を国交省へ提出した。これを受けて、各メディアは一斉に「不正」として報道した。しかしその内容を見ると、多くが不親切で、何が起きているのかが分かりにくい。そこに問題はあった。しかし、その実態は本当のところ何なのか、できる限りフラットにフェアに書いてみたい。
報道のあり方
以上が、筆者が可能な限り真摯に書いた「不正問題」の現状である。ここまでで約5000文字を費やした。これを1000文字や2000文字で書けと言われたら、とてもではないが正確には書けない。紙媒体ならこんな文字数は紙幅の都合でもらえないし、WebならWebでコメント欄に「3行で」という人が頻発する。長い原稿を書いても短い原稿を書いても1本いくらの原稿料は変わらない。そういう中でこういう入り組んだ問題をちゃんと書くのは相当に面倒臭い。「不正発覚○○社は何千台」と書いてしまえば簡単だ。
分かりやすさのために事を単純化した不誠実な原稿と、分かりにくいことを丁寧に書く誠実さ。インセンティブはむしろ前者に高く付く。
それでも真面目に働いているメーカーの人たちが十把一絡げで不正扱いされるのはやはりおかしいと思うし、そんな報道だと誰にも信用されなくなる。今回の一件では、自動車メーカー以上に報道のあり方が問われているように思えてならない。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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