「非正規社員の待遇改善」の手順は? 人事担当者必見の「働き方改革」用語解説:法改正後の均等・均衡待遇を踏まえて(2/3 ページ)
働き方改革関連法が可決・成立し、企業にも具体的な対応が求められます。企業の人事担当者が押さえておくべき「働き方改革」のキーワードをピックアップ。労働問題を扱う新進気鋭の弁護士が、用語の概念と企業が取るべき具体的な対策方法を解説します。今回は「非正規社員の待遇改善」と、その具体的な手順を取り上げます。
2.待遇差は「職務内容」や「人材活用の仕組み」の違いが理由か?
非正規社員と正社員との間で待遇差がある場合、その待遇差が何を理由とするものなのかを検討します。具体的には、職務内容の違いが理由なのか、配転や昇進といった「人材活用の仕組み」の違いが理由なのかといった点です。
非正規社員の待遇差に関する最高裁判決は、先述した長澤運輸事件とハマキョウレックス事件(編集部注:契約社員のトラック運転手が、正社員との手当に違いがあるのは違法だと提訴。大阪高裁は通勤手当、無事故手当、作業手当、給食手当の違いを違法とした。同事件の判決日は長澤運輸事件と同日)の2つしかないものの、現状でも下級審裁判例が徐々に出てきています。これらの裁判所による司法判断や、行政が今後出す指針(ガイドライン)を見て、待遇差が不合理と判断されるリスクがあるものについては見直しを検討することになります。
3.労働条件・処遇の見直し
待遇見直しで優先順位が高いのは各種手当です。裁判でも不合理性が肯定されたものの多くは各種手当についてです。正社員だけに支給していた手当の支給対象を拡大・変更する場合、これによる割増賃金や賞与などへの影響、つまり変更する手当の波及効果についてもシミュレーションしておく必要があります。
また、手当の趣旨が不明確であったり、かなり昔に設けられた手当で、現在その手当を支給する理由・根拠が希薄になっているものがあれば、手当を統合したり、支給要件を見直したりすることも必要になってくるでしょう。
就業規則を見直す場合には、労働契約書や労働協約との整合性に注意が必要です。また、労働者側に不利益な就業規則の変更については、労働契約法9条および10条の規制(就業規則の不利益変更に関する規制)にも留意してください。
4.職務内容や人材活用の仕組み・運用の見直し
待遇差を変更するのではなく、待遇差に対応した職務内容や人材活用の仕組みを整備するというアプローチもあります。その際の視点は、(1)就業規則・規定による明確化(書面化)と実態(運用)の見直し、(2)限定正社員や無期転換社員も視野に入れることが挙げられます。
(1)について補足しますと、形式的に就業規則を改定したり、新たな規定をつくったりするだけではなく、実態や運用の整備も必要になります。実際の職務内容や人材活用方法は変わっていないのに、規定だけが変わったというような、「規定と実態の乖離」が起こらないよう注意してください。
5.派遣社員について
派遣社員については、第5回で説明したように、「派遣先均等・均衡方式」か「労使協定方式」のどちらを選択するかが重要(関連記事)になります。この点は、改正派遣法26条7項で規定された派遣契約を締結する際に、派遣先が派遣元(派遣会社)に提供する派遣先労働者の待遇情報の内容にもかかわってきます。そこで、派遣社員を雇用していない派遣先の側でも、派遣元(派遣会社)にどちらの方式をとるのかを確認しておくべきです。
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