2015年7月27日以前の記事
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騒動がなくても阿波踊りの観光客は減少した、根深くて単純な理由スピン経済の歩き方(3/6 ページ)

徳島の「阿波おどり」をめぐるバトルが世間の注目を集めた。総踊りなどつつがなく行われたが、終わってみれば来場者数は昨年より減少した。「徳島市と踊り手の対立が観光客の足が遠のかせたのでは?」といった指摘が出ているが、筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしている。どういうことかというと……。

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阿波踊りにはポテンシャルがある

 ただ、ここで誤解をしてほしくないのは、阿波おどりそのものに問題があるというわけではないということだ。海外にも広く知れ渡るこの伝統芸能に、観光資源としての大きなポテンシャルがあることは疑いようがない。

 それをよく示しているのが、阿波おどり会館の好調さだ。ここは年間を通して、阿波おどりを体験できる施設で、近年は外国人観光客も増加。03年には年間54万人だったが着々と客足を伸ばして、15年には61万人にもなっている。

 つまり、阿波おどりに触れたい、知りたいという人たちは確実にいるし、その魅力は着々と外国人観光客にも広まっているにもかかわらず、お盆の時期に行われる阿波おどりは赤字続きで、主催者らが見物人や利権の奪い合いをしなくてはいけない、という奇妙な現象が起きているのだ。

 なぜ阿波おどりのポテンシャルを、イベントになると生かすことができないかというと、いまだ「昭和の見物型観光」にゴリゴリに執着しているからだ。

 繰り返しになるが、これは「祭り」や「神社仏閣」「史跡名勝」という「見学スポット」に一度ぶら下がることができれば、後は既得権益者となって甘い汁が吸い続けられるビジネスモデルだ。

 「見学スポット」からいかに近くに店を構えるかとか、その名前を使った「ほにゃらら饅頭」みたいな商品やサービスができるかのがキモという、「海の家」にも通じる「便乗型ビジネス」と言ってもいい。

 このように観光資源の周囲が潤う「見物型観光」のもとでは、観光資源そのものの価値を上げていくことは難しい。「客寄せパンダ」として存在してくれればいいだけなので極端な話、中身が腐って崩れそうであっても、「見物型観光」の恩恵を受ける人たちにはなんの問題もないからだ。

 多くの観光客でにぎわっている国宝の寺や神社がボロボロで壊れたところも放置していたり、あるいは誰もが知るような風光明媚なスポットが全く整備されず荒れ放題になっていたり、というのはこれが理由だが、実はこれは阿波おどりにも当てはまる。

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