「RPAはともだち」――専門家が「人間の仕事を奪う」説に反論:一般職も形を変えて残る
人間の仕事を奪うと危惧されている、定型業務の自動化技術「RPA」。普及が徐々に進みつつあるが、これからの仕事はどうなるのか。パーソルプロセス&テクノロジーの成瀬岳人ゼネラルマネジャーに聞いた。
定型業務を自動化して「働き方改革」につなげられるとして、注目度が急速に高まっている「RPA(Robotic Process Automation、ロボットによる業務自動化)」。事務処理、調査、集計などをプログラムに代行させて業務を効率化する技術で、国内でも導入企業は少しずつ増えている。
だが、企業のRPA導入を支援しているパーソルプロセス&テクノロジー ワークスイッチ事業部 事業推進部でゼネラルマネジャーを務める成瀬岳人さんによると、「ビジネス界にはまだまだRPAの有用性を疑問視する声が多く、『RPAを入れると人の仕事が奪われると聞くが、本当か?』と不安視する問い合わせが寄せられる」という。
同社などの調べによると、国内でRPAを本格的に導入している企業は、大企業の38%、小規模企業の20%程度。海外企業では基幹システムをRPAで自動化する動きもあるが、国内企業は財務・経理・会計といったバックオフィス業務に取り入れ始めている段階だという。
自社導入で一定の成果
こうした状況下でも、成瀬さんがRPAの普及に尽力する理由は(1)処理スピードの速さ、(2)処理の正確性、(3)変化への対応力、(4)導入のハードルの低さ――といった強みに期待しているため。少子高齢化によって労働人口が減少した近未来のビジネス界においても、生産性を高められる有効な手段だと考えているのだ。
RPAの効果を自社でも確かめるべく、パーソルグループは2017年5月に「RPA推進室」を設置。従来は17人の担当者が月に約3750時間かけて行っていた、派遣スタッフの契約延長・終了などの契約変更をRPAに代替させたという。
RPAに任せた定型業務は、(1)契約変更の対象者をWebシステムから検索・抽出する作業、(2)規定通りに契約を変更する作業、(3)変更した契約内容の出力作業――など。
その結果、所要時間は月に約285時間(約3465時間減)、担当者は4人(13人減)にまで削減することに成功。定型業務をサポートしていた人材は、他の新規業務に配置転換したり、営業業務に専念させたりと、より価値を発揮できる仕事を任せているという。
一般職もなくならない
パーソルグループはこのほか、メールの送付と仕分け、交通費申請の運賃検索、社員のセキュリティカード発行手続き、社員用携帯電話の登録手続きなどをRPAで代替している。
「今後は多くの企業で、単純作業をRPAに任せ、人間は機械にはできない発想力を生かした仕事に専念するようになる。RPAに仕事を任せた分、人間は他者と協力してシナジーを生み出す仕事が増えるだろう。仕事を完全に奪われることはない」と成瀬さんは予測する。
企業内で補助的な業務に従事している一般職も「RPAに代替されることはない」という。「RPAの普及が進むと、停止した際の悪影響も大きくなる。これを防ぐためのメンテナンスやデバッグ(バグ修正)など、新たな仕事も増える。一般職はこうした業務を担っていくだろう」とみる。
「RPAはともだち」
ただ、「RPAが人の仕事を奪う」という不安を解消しても、「導入が面倒」といった理由で業務のデジタル化をためらう経営層も一部存在する。こうした企業をクライアントに持った際、成瀬さんは“奥の手”として「RPAの擬人化」を行っているという。
ボーカロイド「初音ミク」のようにRPAを擬人化し、社内で説明会を開催。「○○ちゃんが入社しました!」と告知すると、親しみを持って使い始める人が増えるという。成瀬さんに「RPAのフィギュアを作ってほしい」と頼む人まで現れるそうだ。
成瀬さんは「サッカー漫画に『ボールはともだち』という名言があるが、それと同じ。RPAも人間の友達で、仕事を奪うことはない。今後のビジネスパーソンは、RPAを駆使して生産性を高めながら共存していくだろう」と話している。
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