新たな在留資格創設、それでも不透明な人材確保:どうする? 介護の人材不足問題(3/5 ページ)
日本全体の労働力人口が減少する中、とりわけ介護人材の確保は難航している。政府も海外からの人材受け入れに躍起になっているが……。
(2)就労先の選択肢に入らない日本と東南アジア諸国の高齢化
外国人研修生・実習生にとってハードルが高いとされていた、日本の国家資格取得や日本語能力の要件が緩和されることは大きな前進といえる。ただし、それが介護分野の外国人労働者の増加につながるかどうかは慎重に見ておく必要がある。なぜならば、日本が受入れを期待している近隣アジア諸国の人材は、日本を積極的に目指しているわけではないからだ。
図表5は、介護分野に限られた結果ではないが、海外で就労するインドネシア人、フィリピン人、ベトナム人の就労先の上位5カ国である。日本はベトナムでは2位だが、インドネシアとフィリピンでは15位前後にとどまり、上位5カ国に入っていない。
一般に国際的な労働移動の背景には、送り出し国と受入れ国の賃金格差や地理的な距離、受入れ国の治安や移民ネットワーク(コミュニティー)の確立の有無、家族の呼び寄せや帰化の可否等の規制などさまざまあるが、それらの面で日本は必ずしも魅力的な選択肢にはなっていないようだ。
さらに、送り出し国における高齢化の進展は、日本の外国人材の受入れにとって大きな障害になると考えられる。United Nations[2017](※8)は、インドネシア、フィリピン、ベトナムを中心に東南アジア諸国の60歳以上人口は、2017〜50年の間に6400万人から1億6800万人へ2.6倍に増加する見込みであり、介護問題が深刻化すると指摘している。現在、人材を送り出しているアジア諸国でも自国の高齢化への対応が急務となれば、これまでのように人材を供給することは困難となろう。
つまり、日本の介護分野で就労すること自体の魅力が十分なければ、いくら要件を緩和して門戸を広げても、期待するほど外国人材の増加は見込めないと考えられる。これは、介護職が夜勤などがあってきつい仕事、給与水準が低い仕事というイメージであるために、国内の人材が確保できない状況と同じである(※9)。
従って、まずは介護を効率化して生産性や待遇を向上させるなど、介護分野で就労することの魅力を高める取り組みが必要と思われる。賃金や労働条件の着実な改善はもちろん、外国人材の持つ能力を戦略的に活用することで、介護産業の成長を促すような展望を示すことが重要だ。
※8 United Nations[2017],“Elderly Care Work and Migration: East and Southeast Asian Contexts”5-7 December 2017
※9 内閣府[2010] 世論調査報告書 平成22年9月調査「介護保険制度に関する世論調査」
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