コラム
新たな在留資格創設、それでも不透明な人材確保:どうする? 介護の人材不足問題(4/5 ページ)
日本全体の労働力人口が減少する中、とりわけ介護人材の確保は難航している。政府も海外からの人材受け入れに躍起になっているが……。
外国人材の受け入れを介護産業の成長と結び付ける視点が求められる
(1)介護分野における外国人材の戦略的な活用事例
日本では海外の介護市場に進出している事業者はまだ少ないが、北欧では大手の介護事業者を中心に海外展開に積極的だ。
例えば、スウェーデンの介護大手Attendoは、フィンランドやノルウェー、デンマーク出身の外国人スタッフを多く抱え、これらのエリアで事業展開している。同社は2017年の売り上げの半分を海外事業から得ており(※10)、2025年までに欧州最大のヘルスケアプロバイダーとなるための計画を示すなど、今後の海外事業展開にも意欲的である。
また、移民に寛容な政策を採ってきたスウェーデンでは、高齢化した移民に対して、外国人介護労働者が母語(native language)で介護を行うサービスを展開している。認知症が進むと母語ではない第二言語(スウェーデン語)でのコミュニケーションが難しくなるケースがあり、民間事業者の中には、出身国が同じ外国人介護士による介護サービスをオプションで提供しているところもある。このように、外国人材を新たなビジネス展開や、多様性を生かした付加価値サービスの創造に結び付けることは可能である。
※10 Attendo[2018],“Annual Report 2017”
関連記事
- 65歳でネスレに中途入社したベテラン営業マンが輝いている理由
大手メーカーで営業マンとして20年以上働き、50代で起業経験もある石川さんは、65歳でネスレ日本に入社した。上司や同僚にも仕事ぶりが評判だというが、そのわけとは――。 - 「障害者雇用の水増し」で露呈する“法定雇用率制度の限界”
複数の中央省庁が、障害者の雇用率を長年水増ししてきた疑いが浮上している。障害者雇用の現場で、一体何が起きているのか。自身も脳性麻痺(まひ)の子を持ち、障害者雇用に詳しい慶應義塾大学の中島隆信教授に、国と地方自治体による水増しの背景と、日本の障害者雇用の問題点を聞いた。 - 「定年後再雇用」の注意点は? 人事担当者必見の「働き方改革」用語解説
働き方改革関連法が可決・成立し、企業にも具体的な対応が求められます。企業の人事担当者が押さえておくべき「働き方改革」のキーワードをピックアップ。労働問題を扱う新進気鋭の弁護士が、用語の概念と企業が取るべき具体的な対策方法を解説します。今回は「再雇用時の労働条件」(定年退職前からの待遇変更)を取り上げます。 - 銀行員“受難”の時代にどう生き残るか 「ジェネラリスト」はもういらない
2017年11月、メガバンク3行が大規模な構造改革に踏み切ると発表した。三井住友銀行は約4000人分の業務量、三菱UFJ銀行は約6000人、みずほ銀行は約1万9000人に上る人員削減計画を打ち出し、世間のみならず銀行員自身にも大きな衝撃を与えた。
Copyright © Daiwa Institute of Research Holdings Ltd. All Rights Reserved.