人の気持ちが分からないダメ管理職はAIに取って代わられる:マネジメントの達人に聞く(1/4 ページ)
優れたマネジャーと駄目なマネジャーの違いとは何だろう? プルデンシャル生命保険で伝説のマネジャーと呼ばれ、『25年間「落ちこぼれチーム」を立て直し続けてわかった マネジャーとして一番大切なこと』の著者でもある八木昌実氏が組織マネジメントの本質を語ってくれた。
組織を率いるマネジャーの人たちの悩みは尽きない。さまざまな課題があるだろうが、彼らのマネジメントの主たる目的は、いかにメンバーのやる気を引き出して、チームを成長させるかという点で共通するのではないか。
ただし、目的を成し遂げるためのアプローチはマネジャーによってまるで異なる。そして、多くのマネジャーはそのやり方を誤り、大失敗しているのが現状だろう。
『25年間「落ちこぼれチーム」を立て直し続けてわかった マネジャーとして一番大切なこと』(ダイヤモンド社)の著者であり、かつてはプルデンシャル生命保険で全国トップクラスのチームを作り続け、現在はコンサルティング会社などを経営する八木昌実氏に組織マネジメントの本質を語ってもらった。
全国トップの営業マンがぶち当たった壁
八木氏: プルデンシャルの前に勤めたハウス食品工業のころから、営業には自信がありましたし、成績も良かったです。自分では全国一だと思っていましたけれど、保険会社のように営業ランキングがなかったので分かりませんでした。
プルデンシャルに転職して最初は不安でしたよ。保険営業の経験がないわけですから。仕事にフルコミットでとにかく一生懸命やりました。周りの環境やマネジャーにも恵まれて、すごく売れたんです。保険ってこんなに売れるんだと思いましたよ。前職と比較して売り上げ金額もけた違い。入社して1年半ほどで全国トップの営業成績を収めるまでになりました。
元々、ガツガツいくタイプだったので、売れ出すと周囲の人たちが近寄りがたい、感じの悪い雰囲気があったかもしれませんね。
そうした中、マネジメントのキャリアを進むことになりました。理由は当時の所長からマネジャーをやってくれと言われたことと、昔から自分だけが成功するだけではなくて、メンバーを率いて組織を成功させたいという思いがありました。
とはいえ、マネジャーになって最初はまったく駄目でした。組織に元々いたメンバーも何人か引き継いだのですが、彼らが全然売れないのです。僕から見れば「え、何で売れないの?」と思うわけです。この商品、この会社なのに。
そこで売り方を教えるのですが伝わりません。仕方ないので代わりに僕が売るわけですよ。マネジャー研修では、そんなことしてはいけないと教わるのですが、現実の世界では業績を上げるために皆やってしまうのです。
ただ、代わりに売ることなんて長続きしませんよね。メンバーも育たないし。これでは駄目だと思い、全国トップクラスのマネジャーたちのもとに足を運び、頭を下げて、教えを請いたいと相談しました。「プライドが邪魔をしなかったのか?」と聞かれることがあるのですが、そんなプライドよりも、すべてを失うほうが怖いです。業績を上げるためにはプライドなんて言っていられません。教えてもらえるのであれば何でも吸収してやろうと、ずっと付きっきりで、彼らの話や振る舞いなどを漏らさずすべてメモに取りました。
幸いなことに、彼らも包み隠さずにいろいろと教えてくれました。ある所長は、部署に新人が入ってきたら、1カ月間ずっと同行販売すると言いました。学んだことが本当に現場でできているかという確認作業であり、できていなければその場で修正するのです。加えて、信頼関係の構築にもなります。まさに寝食を共にするわけですから。
実はこうした行動は、会社の「ブルーブック」(営業マニュアル本)に書いてあるのです。けれども、僕の回りのマネジャーはそれをほとんどやっていませんでした。ここで学んだのは、できるマネジャーに共通するのは基本に忠実で、職人芸みたいなことはやっていないということです。
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