コンビニの店舗面積はなぜ50〜60坪が多い?:もっと広い店舗じゃダメなの?(1/3 ページ)
大手コンビニチェーンの一般的な店舗面積は50〜60坪が標準とされているが、どのようなどのような経緯でこの広さに落ち着いたのか。調べてみるとコンビニの歴史にも関係する深い話を聞くことができた。
コンビニの一般的な店舗面積は50〜60坪(約165〜200平方メートル)が多いとされる。例えば、ローソンが公表している「出店ガイドライン」によると、「施設内店舗(テナント)」の店舗面積は40〜60坪前後、「郊外型店舗、路面店舗」の店舗面積は60坪となっている。同社の広報担当者も「50〜60坪が標準的な店舗面積と考えて問題ない」と語る。セブン-イレブンが公表している「出店ガイドライン」でも、「施設内標準型店舗」の面積を40〜60坪前後としているので、コンビニ業界全体の傾向と考えてよいだろう。
もちろん、小さな面積の店舗もある。ローソンの場合、商業ビルや病院といったところにある「施設内小型店舗(スモールテナント)」は標準的な店舗面積が20〜30坪となっている。さらに、駅ナカに出店しているコンビニに至っては店舗面積が10坪未満のところもある。
それでは、なぜ、コンビニの標準的な店舗面積は50〜60坪になっているのだろうか。ローソンで標準的な店舗フォーマットの設計や開発を担当している池田鋼一郎氏(商品本部店舗企画部部長)に話を聞いた。
先人の試行錯誤の末に行き着いた
まず、コンビニが本格的に普及し始めた40年前にさかのぼってみよう。当時、コンビニのメインターゲットは若者だった。コンビニは24時間営業という利便性が強みだった一方、スーパーに比べて品ぞろえが弱かった。
コンビニに若者を引き寄せるには「新商品を多く取りそろえて、目新しさを訴求する必要があった」(池田氏)。そこで、当時のコンビニがとった戦略は、1年間で8割以上の商品を入れ替えることだった。毎週のように新商品を店舗に届けることで、「コンビニに行けば新しい商品に出会える」とお客に思ってもらうようにしたのだ。
しかし、この戦略には欠点があった。棚に並んだ商品を売り切る前に新商品が店舗に届くと、古い商品を廃棄せざるを得なくなり、お店の利益率が下がってしまう。仕入れたものを返品することはできないため、商品を一定期間内に売り切る必要に迫られた。専門的な用語でいうと、廃棄ロスを減らし、「棚効率」(棚に並べた商品が一定期間でどのくらい売れたのかを示す指標)を上げる工夫が求められた。
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