人手不足が深刻化、建設現場の生産性向上は喫緊の課題だ:減り続ける大工(2/2 ページ)
人口・世帯数減少は、国内のさまざまな市場に大きな影響を及ぼすが、とりわけその影響が大きいと考えられるのが住宅市場である。ただし、新設住宅着工戸数という需要の減少と同時に、大工人数という供給の減少ももたらすことが問題となっている。
建設現場のデジタル・トランスフォーメーション(DX)が急務
人口・世帯数減少が本格化する30年には、新設住宅着工数は約60万戸(10年度比27%減)にまで減少する一方、大工人数は約21万人(10年度比49%減)にまで減少すると予測しましたが、減少幅について言えば、実は大工の方が大きいのです。
わが国では長年、「年間の大工1人当たりの新設住宅着工戸数」は約2戸前後で推移してきましたが、今後は需要(新設住宅着工戸数)の減少幅を、供給(大工の人数)の減少幅が上回るため、建設現場の生産性を約1.4倍にまで引き上げないと、約60万戸の需要でも供給できなくなる可能性が高いでしょう。
建設現場の生産性向上が実現できないと、大工の人数が供給制約となった場合、新設住宅着工戸数は約42万戸にまで減少する可能性があります(21万人の大工が1人当たり住宅2戸を建てた場合の新設住宅着工戸数)。人手不足が供給制約とならないようにするためには、建設現場における飛躍的な生産性向上が必要となります。
かつて、プレハブ住宅(工業化住宅)は、わが国における住宅の量的不足や建設技能者の不足を解決する上で大きな役割を担いました。今後は、建設現場での工数削減に寄与する工法上のイノベーションや、熟練工の技術に依存しない建材や設備のイノベーションといった、人手不足問題に対する解決策が求められるようになるでしょう。
AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ロボット等の活用により、飛躍的な生産性向上と付加価値向上を同時に実現する「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」に対する業界全体の取り組みに期待したいです。
(NRI グローバルインフラコンサルティング部長 榊原渉、同部 大道亮)
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