なぜ今「ペーパーレス」が再注目されているのか?:働き方改革の文脈で(1/5 ページ)
1970年代に生まれた「ペーパーレス」。以来、ほとんど進展していないように思われるが、実は今注目を集めているのをご存じだろうか。詳しくみていきたい。
オフィス改革を語るとき、今でも登場するテーマと言えるのが「ペーパーレス」だ。ペーパーレスという考え方が生まれたのは1970年代にさかのぼるが、実は今、働き方改革の盛り上がりの中で存在感を増しているのをご存じだろうか。
約50年も前からさほど進展したようには思えない「ペーパーレス」が、なぜ今注目を集めているのか。働き方改革時代のペーパーレスは、これまでのペーパーレスと何が違うのか、どのように展開しているのだろうか。詳しくみていきたい。
認知度ほどには浸透していなかった「ペーパーレス」
これまでペーパーレスには2回のブームがあった。
最初は約50年前、1970年代のことだ。PCが社内や部内に1台、2台と導入され、取引先の管理などがそれによってようやく実用化されたころ、OA(オフィスオートメーション)の打ち出すオフィスの未来像として活用事務機器会社がペーパーレスをうたった。
「未来のオフィスは紙がなくなりすべて電子化される」というのがその未来像だったが、当時は技術も環境も整っていない時代であり、多くの会社にとっては、一つのお題目として終わってしまった。
次のブームは1990年代半ばにあった。
オフィスにPCがあるのは当たり前の風景になり、社内ネットワークの導入が始まった時代である。コピーや印刷によるオフィスでの紙の大量消費が、コストやエコの観点から問題になり、再生紙の利用などとともにペーパーレス化の必要性が叫ばれるようになったのだ。ペーパーレスが本格的に国内に定着したのはこの時期だった。
しかし、この時代では、文書をデジタル化するスキャナーやデータを保存するストレージもまだ高額だった上に、ネットワークも未成熟だったため、保存したものを自由に取り出すことが難しいという技術的な制約があった。
また、帳簿や帳票、申請書などを紙以外で保管することが制度的に認められていなかったこともあり、やはり広く普及することはなかったのである。
それでも、2004年には「e-文書法」が制定され、一部の文書を電子データとして保存することを認めるように行政が後押ししたり、企業内における用紙・印刷コスト圧縮の指導が進んだりして、紙の消費量は2007年をピークに低下し始める。
日本製紙連合会の資料によると、2000年代後半の「印刷・情報用紙」の内需量は年間1200万トンだが、2010年になると、20%近く落ちて995万トンにまで減少し、長年の課題であったペーパーレスもついに軌道に乗ったと思われた(参考:「紙産業の現状 紙・板紙」 日本製紙連合会)。
2010年ごろになるとペーパーレス化に熱心に取り組む企業や自治体が現れて実績を上げており、第3次ブーム到来という声も上がっていた。しかしながら、ネットや電子デバイスの発達、コストダウンが進み、ペーパーレスを導入しやすい環境が整い出したわりには、2010年以降の動きは鈍いものにとどまった。日本製紙連合会の資料から見ると、内需量は2017年には843万トンで、7年かけても約15%の減少にとどまっている。
ペーパーレスは、考え方としてはすっかり定着したものの、これまでのところ、大きなうねりにまでは育っていないと言えるのではないだろうか。
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