なぜ今「ペーパーレス」が再注目されているのか?:働き方改革の文脈で(2/5 ページ)
1970年代に生まれた「ペーパーレス」。以来、ほとんど進展していないように思われるが、実は今注目を集めているのをご存じだろうか。詳しくみていきたい。
「紙を減らす理由」を見直すことで生まれた、新しい意味
では、注目を集めている今のペーパーレスと、かつてのペーパーレスとでは、一体どこが違うのだろうか。
これまで言われてきたペーパーレスの最終目的は、あくまでも「エコ」や「コスト圧縮」だった。「どう紙を減らすか」という“HOW”が議論の中心になっていたため、技術や環境面、コスト面や使い勝手の問題で、それが容易に実現できないということが多かった。
ネットやデバイス、クラウドなどの環境が整ってきたことにより、この“HOW”は一気に解決へと向かうようになった。これにより、“WHY”、つまり「なぜ紙をなくすのか」という原点を考えるようになり、エコやコスト削減という目的の重要性に、「ワークスタイル改革による生産性向上」というより大きな目的が加わったのだ。
身近な例として、会議用資料のケースで考えてみよう。
会議前になると、数十ページにおよぶ資料の整理・チェック、印刷、製本、配布などの作業が発生し、スタッフがそれに忙殺されることになるのは、多くのビジネスパーソンが経験しているところだ。
このとき、この膨大な紙資料をなくせば、用紙・印刷コストが下がると考えるのが、従来のペーパーレスの考え方だ。最新のペーパーレスは、紙をなくし、電子化することによって、印刷・製本・配布に要する作業時間を圧縮でき、その時間をもっと生産性の高い作業に回すことができると考える。
さらに、部署ごとに保管する必要がなくなるので、キャビネットが空く。ネット上で共有すれば、検索もしやすくなる。いつでもどこでも利用可能になって、資料室にこもってファイルを捜索する手間がなくなる。コストの削減にとどまらず、「労働時間の有効活用」や「ワークスタイルの多様化」など「生産性向上」のチェーンがつながっていくのである。
ここ数年で、ペーパーレスはワークスタイル改革の有効な手段になったと言えるだろう。
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