『情熱大陸』に出たい連中、痛くないか?:常見陽平のサラリーマン研究所(3/4 ページ)
読者の周囲に「オレ、『情熱大陸』に出たいんだ」という人はいないだろうか。正直に言おう。こういう人は、痛い。ちょっと引いてしまう人たちに、どのように対応すればいいのかというと……。
他人の家に土足で入ってくるような取材
当時の代表的な報道番組からの依頼だったので、会社の関係者は狂喜乱舞であったが、取材対応は困難の連続だった。ディレクターが情熱的な方で、企画がスタートしてから放送まで11カ月かかって、そのうち9カ月ほどカメラが回っていた。
正直なところ、見られたくないシーンも多数、あった。クライアントとケンカしているシーンなどである。社外秘すれすれの部分まで、カメラは情け容赦なく入ってくる。こちらは「ありのままを見せたい」と言ったものの、全部を見られてはさすがに困るし、マイナス面はできれば見せたくない。
また、被写体である会社の社員やクライアントも素人である。申し訳ないが、メディアとは何かを分かっていないし、撮影されることに慣れていない。影響力のある番組で紹介されることは大変に光栄で、露出効果もものすごくあるので、感謝している。とはいえ、先ほど紹介したように、他人の家に土足で入ってくるような取材が続くと、さすがにこちらも疲弊してくる。イライラが募り、情熱的なディレクターと一度ケンカになってしまった。当時の私は29歳で、血気盛んな時期だったこともある。すぐに謝罪したのだが、いまでも苦い思い出として残っている。
話を『情熱大陸』に戻す。この番組に出演している人は多様だ。カメラ慣れしている芸能人やスポーツ選手から、街の名物人間、若い才能まで登場する。言うまでもなく、慣れていない人には過酷である。
慣れていないだけでなく、20数分の尺をもたせるほどの情熱、いや、ネタがその人にあるのかどうかという問題もある。皆さんも一度くらいは、経営者が書いたビジネス書を読んだことがあるだろう。ビジネス書の9割は構成作家(いわゆるゴーストライター)が書いているとも言われていて、書き手が経営者などに話を聞く。幼少期の話であったり、学生時代の武勇伝であったり、社会人駆け出しのころの挫折などを語ってもらうわけだが、それでも一冊の本としてまとめるにはネタ不足に陥るケースが少なくないのだ。
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