「運休」「復旧」の判断とは? 災害と鉄道、そのとき現場は……:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)
大きな自然災害に見舞われた2018年。豪雪被害が出た福井県のえちぜん鉄道で復旧の陣頭指揮を執った担当者に、「復旧の優先順位」や「運休判断のタイミング」などについて聞いた。
自治体の作業支援が難しい理由
鉄道の復旧にあたり、基本的に線路の除雪は自社で行った。道路の復旧も急務だった自治体からの支援も困難だった。えちぜん鉄道は第三セクターであり、沿線自治体も出資している。JRと違い、応援要請もできたはずではないか。しかし、もともと自治体の除雪支援には難しい面がある。
「自治体の持つリソースでは鉄道施設の除雪は難しいです。線路を除雪するための機械は鉄道会社にしかなく、道路用の機械を入れることはできません。ただし、駅の周りの歩道とか、踏切付近の道路の除雪などを協力していただきましたし、通常は鉄道側で主に対応していた踏切内の圧雪についても、道路除雪の現場とのやり取りの中でこれまでより踏み込んだ作業協力ができました」
踏切そのものの除雪は鉄道にとっても道路にとっても非常に大変な作業となる。踏切も圧雪がひどいと車が通行不能になる。凍った圧雪は列車ですら脱線の危険がある。その硬い圧雪を、ツルハシやスコップなど人海戦術ではがしていくのだ。しかし、今回の豪雪ではこのような人力でできる作業量をはるかに超える事態となり、道路管理者(県土木事務所や市町の道路担当)と除雪業者、鉄道が協力してバックホーなどの重機を入れて圧雪を除去した。また車の通行が困難な踏切は、除雪や圧雪除去が完了するまで通行止めとするなど、通常とは全く異なる非常時対応を取り、順次再開区間を伸ばしていった。
「特に列車が運行している場合は危険な場所だという認識があるから、誰にでも応援をお願いできるものではありません。しかし、自衛隊に一晩だけ作業していただきました。ロータリー除雪車両で雪を飛ばす場所がなく、どうしても人力になる狭いところです。災害救助法にのっとって県から自衛隊に依頼し、国道8号線の救援を終えた部隊に寄っていただいた。助かりました。これがなかったら勝山永平寺線の運休期間はもっと長くなっていたと思います」
災害復旧にあたって、自治体に望むことはあるか。
「非常時に何でも期待するのは甘い考えだと思っています。大雪、洪水など、自治体にとっても住民の安全を確保しなければならない非常事態で、誰だって余裕はないでしょう。安全な輸送の確保の責任は事業者にあります。しかし自治体と緊密なコミュニケーションのもと、結果的に助けてもらったら、それは大変ありがたい。そのくらいの心構えが必要だと思ってはいますが、平時に有事を想定した協力体制の協議や、防災、減災のための相互の役割分担の確立の必要性も痛切に感じています」
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