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「運休」「復旧」の判断とは? 災害と鉄道、そのとき現場は……杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)

大きな自然災害に見舞われた2018年。豪雪被害が出た福井県のえちぜん鉄道で復旧の陣頭指揮を執った担当者に、「復旧の優先順位」や「運休判断のタイミング」などについて聞いた。

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運休は「経営判断」ではない

 運休判断のタイミングも難しい。災害発生時には「遅すぎる」と言われ、事前運休を決めれば「早すぎる」と言われる。被災による運休と、気象情報を得て事前に運休を決める場合の意思決定はどうなっているのか。列車を止めれば収入はなくなる。自主的な営業停止。それは高度な経営判断が必要な場面ではないか。

 「安全統括責任者の判断が基本になります。緊急の安全に関わる問題ですから。非常時ですし、安全確認ができない限り列車は動かせない。安全の指揮系統は1つです。どの鉄道会社でもそれは一緒です」

 平成30年豪雪で、えちぜん鉄道は断続的に長期間不通となった。しかし、乗客に被害がなく、社員も全員無事だった。脱線もしていなければ、壊れたものもない。それで十分だ。

 「(復旧が遅れようとも)現場の作業自体が危険なら中止命令にします。限られた人員で作業を継続できるように、安全に配慮しながらやってくれという方針です。無理はしない。昼夜突貫工事も避ける。夜間は列車が走らないとはいえ、交代要員がいないので24時間の作業はできません。長期間の対応が必要な事態において、不眠不休というのは長くは続けられません。特に天候が危険なとき、自然の猛威に対してできることは非常に限られています」

 大災害である。営業できないなんて当然だ。収入や経営については、全て終わってからの問題だ。お金で取り返せないものを失わなかった。お金の話はその次でいい。

 豪雪災害だから季節外れの話になってしまったけれども、鉄道の現場の考え方として普遍的な内容だと思う。

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えちぜん鉄道を舞台にした映画『えちてつ物語』が11月から全国順次公開予定(出典:公式サイト

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