「お客様満足度」を高めることばかり、考えてはいけない:喜びの戦略は割に合わない(4/5 ページ)
顧客満足度を高めることが大切――。このことを信じて疑わない企業も多いだろうが、実は“そこそこ”でいいことが分かってきた。顧客満足度の結果と将来の顧客ロイヤルティーの間に統計的な関係はなくて……。
喜びの戦略は割に合わない
多くの経営幹部が、顧客の期待を超えるサービスが顧客ロイヤルティーの向上に及ぼす力を疑いもなく信じているのに対し、9万7000人あまりの顧客の回答を分析して分かったのは、期待以上のサービスを受けた顧客と期待が満たされただけの顧客のロイヤルティーには事実上差がないということだ。期待以上のサービスを受けた顧客のロイヤルティーが飛躍的に上昇するのではなく、期待が満たされればその後ロイヤルティーの伸びはむしろ横ばいになると、本書籍は結論付けている。
企業は顧客の期待を上回ることから得られるメリットをたいそう過大評価する傾向がある。ロイヤルティーの向上を目指して、常に期待を超えるために多くの人的リソースや予算を投入しているが、果たしてそれに見合った経済的な利益はもたらされているのだろうか。ディクソン氏の研究結果は、明らかに顧客サービスの責任者にとっては衝撃が大きく、社会通念に対抗する挑発的な見解とみなされるだろう。期待の上をいく―顧客を「感動させる」ことが顧客のロイヤルティーの向上につながるとずっと信じてきたからだ。
しかし、データが物語るのは、顧客の心を支配しているのは、何か問題が起きたときにその解決に力を貸してほしい感情だということである。感動させる必要などないから、とにかく問題を解決して、それまで普通に得られた経験、対価を再び得られるようにしてほしいということなのだ。
そしてもう1つ、さらに恐ろしい事実がある。それは、顧客サービスはロイヤルティーよりもディスロイヤルティー(顧客のロイヤルティーを低下させること)を促進する可能性のほうが4倍も高いということである。
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