中野サンプラザはなぜ「大三角形」なのか? 中野区に聞いてみた:解体される方向にある(2/2 ページ)
1973年に開業してから中野区民に愛され続けた中野サンプラザだが、現役区長が再開発の方向性を打ち出したことで、解体される可能性が高まった。そこで、中野サンプラザはなぜ「大三角形」のデザインなのか、運営方法はどのようになっているのか、中野区の担当者に聞いた。
どうして「大三角形」になったのか
それでは、中野サンプラザはどうして「大三角形」のデザインになったのだろうか。40年以上前のことなので当時のことを正確に記憶している人はほとんどいないが、担当者によると、いくつかの説があるという。ただ、それらの説に共通しているのは、構造上、コンサートホールの上部に大きな建築物を設置できない点である。実際、中野サンプラザには1階の正面階段から続くコンサートホールが2階にあるが、その上には大きな建築物はない。
中野サンプラザは上階にいくほど床面積が小さくなり、とがったような形になっているが、それはなぜなのか。担当者は「建設当時、中野サンプラザの北側に住宅街があり、日当たりをよくするために配慮した可能性がある」と解説する。高層部分を減らすことで、日陰をなるべくなくそうという説だ。ただし、この説が正しいとすると、L字型のビルでも日陰の問題はある程度クリアできるはずで、現在の大三角形になった決定的な理由にはならない。
設計者の強い思いが反映されているという説
もう1つの説は、設計者の1人である故・林昌二氏の強い思いが反映されているというものだ。サンプラザ内にかつて存在していた展示物によると、林氏は「中央線に乗ってずっとあそこを走って行くと(中略)遠くから見たときに分かりやすい単純なものが良いのではなかろうか」と語っていたという。当時、コンサートホールやレストランといった多くの機能が備わった複合施設は非常に珍しく、そこにふさわしいデザインを追求した結果「分かりやすく、単純な、大きな三角形」になったという。
今回、区役所の担当者に話を聞いてみたが、「大三角形」になった決定的な理由は明らかにならなかった。ただ、きちんとした答えが分からないところも、この建造物の魅力のひとつではないだろうか。
もしかしたら、もうすぐなくなるかもしれない中野サンプラザ。設計者の狙いに思いをはせながらその姿を目に焼き付けてはいかがだろうか。
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