マクドナルド元幹部が語った「スマイル0円」の真意と人材育成の極意:マクドナルド流の教育とは?(2/4 ページ)
1990年代後半、日本マクドナルドの社内育成機関である「マクドナルド大学」の学長に就任した有本均氏は、大量のアルバイトを短期間で店長代理に育成する必要に迫られた。数々の改革を打ち出し、周囲を説得した背景にあったのは「バイトでも教えればしっかりと育つ」という信念だった。
社員の権限をどこまで委譲するか
当時、SWマネージャーは「店長代理」とほぼ同じ位置付けで、店長がアルバイトの成長度合いをもとに任命する方式だった。平均的な店舗には4〜5人いたという。
1998年から社内の人材育成機関「ハンバーガー大学」の学長に就任した有本氏は、OJTを中心に3カ月でSWマネージャーを育成するプログラムを作成した。これまでは1年かけて行うのが通常だったので、大幅な期間短縮になる。ただし、教育の質を下げるというものではなく、覚えるべき業務に優先順位をつけて、店舗運営を担える状態に早期に持っていくというのが改革の柱だった。
具体的には、サービス業の行動指針である「QSC(クオリティ、サービス、クリーンネス)」が身についているかどうかを評価するチェックシートをつくり、店長が働きながらアルバイトを指導するといった内容だ。
「人材育成をする際は、『何を教えるか』『どうなってほしいのか』を明確に部下に示すことが必要です。マクドナルドの店舗運営や人材育成はその点がマニュアルやチェックシートで明確に示されていました。日本の外食チェーンの中では完成度がとても高かったのではないでしょうか」
「バイトにバイトの面接をさせる」プランで紛糾
有本氏が手掛けたのは、チェックシートやOJTのプログラム作成だけではない。サテライト店舗の運営を円滑にするには、それまで社員が持っていた権限をSWマネージャーに委譲しなければいけないと有本氏は考えた。
特に社内で議論を巻き起こしたのは、アルバイトの採用権限をSWマネージャーに与えるというものだった。有本氏はハンバーガー大学の学長に就任する前、いくつかの店舗で店長を経験していたが、「社員だからといって必ずしもバイトの素質を見極められるわけではない」「オペレーションの面で社員より優秀なバイトはたくさんいる」と考えていた。そこで、「教えれば人は育つ」という信念のもと、現場のオペレーションを統括する営業部長たちを説得して実現にこぎつけた。
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