マクドナルド元幹部が語った「スマイル0円」の真意と人材育成の極意:マクドナルド流の教育とは?(3/4 ページ)
1990年代後半、日本マクドナルドの社内育成機関である「マクドナルド大学」の学長に就任した有本均氏は、大量のアルバイトを短期間で店長代理に育成する必要に迫られた。数々の改革を打ち出し、周囲を説得した背景にあったのは「バイトでも教えればしっかりと育つ」という信念だった。
やる気のない女子高生が変わった理由
有本氏の「人は育つ」という信念が生まれたのは、店長時代に採用した女子高生アルバイトの成長ぶりを間近で見てきた経験があったからだという。
1980年代、東京都西部にある店舗の店長をしていた有本氏は女子高生アルバイトのA子さんをクビにしようかどうか真剣に悩んでいた。接客面で「スマイル0円」を売りにしていたにもかかわらず、仕事中に笑顔をつくることはほとんどなく、仕事を覚える気もないようにみえた。
だが、A子さんは、自分より年下のアルバイトを指導したり、有本氏から仕事ぶりを評価されたりといった経験を経て、自然と笑顔の接客ができるようになっていった。
「笑顔がないからといって、接客が嫌いだったり、性格が暗かったりというわけではありませんでした。彼女が店舗における自分の役割を自覚するに従い、笑顔がつくれるようになっていったのです」
A子さんに限らず、最初はうまく仕事ができなくても、何年もかけてレベルを上げ、最終的に日本マクドナルドに入社したアルバイトを有本氏は何人も見てきた。だから、教え方を工夫さえすればさまざまな権限を委譲しても、社員と同じかそれ以上の活躍ができると有本氏は考えるようになった。
「スマイル0円」を打ち出す意味
有本氏によると、マクドナルドの接客で重要なのは「笑顔」と「スピード」だという。ファストフードであるハンバーガーは単価の安い商品だが、注文してから提供されるまでの時間をより短くして、笑顔でお客に対応することで、満足できる買い物体験をお客に提供できる。
「笑顔」というサービスの重要性を象徴するのが「スマイル0円」だ。当時、日本マクドナルドではハンバーガーではなく、アルバイトの女性が接客する姿を軸にしたテレビコマーシャルを流していたという。お客に対しては「質の高い接客」をアピールするとともに、従業員に対しては「笑顔が大事であるというメッセージを伝える手段」(有本氏)だった。前述のA子さんも笑顔の重要性を肌で感じ取ったため、自分から笑顔を出すようになっていったと有本氏は分析する。
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