懲戒解雇になり得る6つの"重大な問題"
それでは、懲戒解雇に値する重大な問題とはどこからになるのでしょうか。明確な基準はありませんが、一例として以下のような事項が考えられます。
1.業務上の地位を利用した犯罪行為をした場合
こちらは想像がつきやすいと思いますが、経理職員が不正経理によって横領行為をしていたり、営業職員が架空取引を計上して利益を得ていたという場合は、懲戒解雇となるのが一般的です。
これらが刑事事件として立件されるかどうかは別として、このような行為は会社に対する深刻な背信行為であり、かつ会社の損害も通常大きなものとなりますので、懲戒解雇の理由には十分に当てはまると考えられます。
2.会社の名誉を著しく害する重大な犯罪行為
業務とは関わりのない私生活上の行為であっても、殺人、強盗、強姦などの重大犯罪や会社の名声を著しく貶めるような犯罪行為がある場合(例えば、鉄道会社の駅員が常習的な痴漢行為で逮捕された等)、懲戒解雇が認められます。
3.経歴の重大な詐称
会社の採用判断に重要な影響を与える経歴(例えば大卒の有無、特定資格の保有の有無等)を詐称していた場合、会社の採用プロセスへの深刻な背信行為として、懲戒解雇が許される場合があります。
4.長期間の無断欠勤
長期間の無断欠勤は会社にも損害を与えます。例えば、対象者が正当な理由なく1ヶ月以上無断欠勤を続け、度重なる出勤命令も拒否し続けた場合には、懲戒解雇が認められる可能性があります。
5.重大なセクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメント
セクシャル・ハラスメントやパワー・ハラスメントは、通常は一発で懲戒解雇となるものではありません。しかし、強制わいせつや強姦に類似するようなセクシャル・ハラスメントや恐喝や傷害に至るようなパワー・ハラスメントの場合は、事案の悪質性から懲戒解雇が認められる可能性があります。
6.懲戒処分を受けても同様の行為を繰り返す
軽度のパワハラ・セクハラ、単純な無断欠勤、業務命令違反等については、当初は注意指導や軽微な懲戒処分 (訓告や減給など)がされることがほとんどでしょう。
しかし、このような是正措置を講じても本人がこれを改善せず、同様の行為を繰り返す場合は事案が悪質であるとして懲戒解雇が認められる可能性があります。
いかがでしょうか。懲戒解雇が許される場面が極めて特別な場合に限定されていることをお分かりいただけたと思います。もしも懲戒解雇をしようとしている又は懲戒解雇されてしまったという方がいれば、その懲戒解雇が有効なものか慎重に検討してください。ワンマン経営の零細企業では、社長が少しでも気に入らないと懲戒解雇にするなどと言うケースもあるようですが、そのような懲戒解雇は往々にして不適法です。
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