ヒップをきれいに見せたい女性が増加 「ブラジリアンビキニ」ブームの真相:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/6 ページ)
露出度が高く、ヒップを美しく見せるブラジリアンビキニがブームになっている。縮小を続けた女性の水着市場も底を打ったとみられているが、背景には何があるのだろうか。ブームの仕掛け人に聞いた。
「水着屋」の役割とは
佐藤氏は茅ヶ崎高校(神奈川県茅ヶ崎市)出身で、高校の水泳部の水着をデザインしたのが水着とかかわるきっかけ。ファッションビジネスを志し、パリ滞在中にジャン・ポール・ゴルチエら、1980年代に出現したボディーファッションの新しい潮流に衝撃を受け、試行錯誤を繰り返すうちに、ブラジリアンビキニに到達したという。ゴルチエは、マドンナのステージ衣装を担当したことで有名であり、“エロかっこいい”の元祖のようなデザイナーだ。
「一番簡単なボディーファッションは美容院です。水着屋の仕事はその人にとってベストな髪形に整える美容師に近いと言えますね。また、ステーキは肉の切り方によって味が大きく変わります。水着屋はどのカット、どの色がその人を一番輝かせるかを見立てて選んで差し上げるので、肉をかっこよく切る調理人にも似ています」と、佐藤氏は自身の仕事の本質を語る。
体を覆う布が小さくても、「いかに隠すか」から発想された商品は「上下が分かれたセパレーツの水着であって、ブラジリアンビキニではないです」と手厳しい。流行に乗って、単なる極小セパレーツを売っている業者は長続きしないと警鐘を鳴らしている。
ブラジル製の品質向上に尽力
同店で販売している「サリナス」「ブルーマン」などのブランドはリオの先端的なデザイナーが手掛けている。ブラジルの水着工場で佐藤氏を知らない人はいない。最長で1年のうち10カ月を現地で過ごしているからだ。
40年前のブラジルの水着は、1回着たら破れてしまう粗悪な代物で、品質に厳しい日本人が到底買えるものではなかった。そこで、日本のミシン、欧州の糸、米国の生地を導入し、丁寧に指導して販売にたえる商品へと向上させた。フリドメールの商品はそのまま輸入するだけでなく、日本向けに色や柄、カッティングなどを変えたり、日本限定のデザインで販売したりしている。
価格は1万〜10万円と幅広く、年齢層も60代まで着られる商品を置く。一般に水着売場は10代後半〜20代に向けて販売するが、カバーする年齢が広いのもユニークだ。
佐藤氏は「今年の湘南の海は、ライザップのブームもあって鍛えた肉体を見せる男性が増えた。これまでになかった傾向」と分析。インナーとしてはくブラジルの水着「スンガ」をチラ見せするレイヤードスタイルを、サッカーのロシア・ワールドカップで、ネイマール選手が披露して話題になった。男性向けスンガも売れてきている。
女性の海水浴客は減っていたが、東京オリンピックに向けて、フィットネスブームが過熱気味なので、来年は期待できるとしている。
もっとも、ジムなどに通わず、ビーチでバレーボール、サッカー、テニス等で遊んで、人生を楽しみながら体を鍛えるのがカリオカのスタイル。東京オリンピック開催をきっかけに、健康増進に対する人々の考え方、姿勢が変わればブラジリアンビキニが一般化するだろう。
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