金融業界化する電力業界を「ブロックチェーン」で変えるーーTRENDE妹尾社長:電力業界もブロックチェーン
MFクラウド Expo2018に登壇したTRENDEの妹尾賢俊社長が、金融業界と電力業界は似ているところがあり、テクノロジーを活用したベンチャーが活躍するとともに、分散型への移行が進むと見通しを話した。
「電力業界は、パラダイムシフトが起きている金融業界のようになっていくのではないか。低金利に苦しむ銀行業界のように、これからなっていく」
東電グループのベンチャー企業、TRENDEの妹尾賢俊社長は10月5日、マネーフォワード主催のカンファレンス「MFクラウド Expo2018」の基調講演で、こんな予測を話した。妹尾氏は、ソーシャルレンディングでシェアトップのmaneoの創業者。フィンテックでの経験を元に、今度は電力業界の変革を目指している。
金融業界と電力業界は、総括原価主義や顧客UX軽視、また護送船団方式や地域独占といった点でよく似ていると妹尾氏。金融業界は、長らく行政当局のリーダーシップのもとで運営してきたが、低金利政策による収益性低下や、顧客UXを重視するフィンテックベンチャーが躍進してきている。
「電力業界も、これからそうなっていく。首都圏なら東京電力、中部なら中部電力と、地域独占の大企業が牛耳ってきた。電力メーターが重要だが、そこでも顧客のUXは軽視されてきた。小売も総括原価主義で、その上で料金を決めている。電気の小売は自由化されてやっと競争が始まった。ただ、まだ金融業界ほどではない。収益性でいうと、電気の小売事業はもうかるが、この収益性は必ず低下していく」
TRENDEは、このような環境変化に対応するため、ブロックチェーン技術を活用しピア・トゥ・ピア型の個人間電力取引の実現を目指している。間に業者を挟まずに取引を行えるプラットフォームを整備することで、効率的に売買できる仕組みを作ろうとしている。「例えば、自宅の屋根の太陽光パネルで発電した電力が余ったら、じゃあ隣のパン屋さんに売ろうとか、そんな世界。来年にはプラットフォームの実証実験をスタートできるのではないか」
個人間電力取引プラットフォームの実現には、ブロックチェーン技術を使う。「売る側にも買う側にも電気のメーターがある。取引をコントロールするデバイスとして重要な候補がメーター。これをセキュアに使うのにブロックチェーンが有用なのではないか」
金融業界では、ビットコインに代表される仮想通貨の登場で、どこにも中央管理者がいない分散型の通貨の可能性が示された。一方で、現在の電力業界は、大規模発電所で作ったものを地域独占の電力会社が家庭まで届ける中央集権型だ。
「すでに太陽光パネルは分散型エネルギー源(DER)として普及をはじめている。電力の世界では分散型電源に向かう世界は不可避。その中で、ブロックチェーンを使って効率的にやっていく」
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