新しく就任した大臣が「失言」を繰り返す、3つの理由:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
内閣改造の風物詩ともいうべき、「大臣の首を取りましょうキャンペーン」が本格化している。それにしても、なぜ新たに就任した大臣は「失言」を繰り返すのか。筆者の窪田氏の分析によると……。
大臣の椅子は、政治家にとって「上がり」
まず(1)から説明しよう。今回の改造内閣が「在庫一掃」「バーゲンセール」など揶揄(やゆ)されていることからも分かるように、当選回数で実績のある議員は向き不向きは関係なく、トコロテン方式で一度は大臣ポストに就けなくてはいけない、というのが永田町の不文律なのだ。
こういう「みんな仲良く、ケンカせず」ができないリーダーは、貴乃花親方ではないが「組織人失格」の烙印(らくいん)を押されて組織からすさまじいリンチにあう。それは日本の最高権力者である内閣総理大臣も然りで、各派閥のパワーバランスや、総裁選への貢献度で、「みんな」が納得するような采配ができなくては、すぐに「総理おろし」の風が吹き、マスコミに悪口がどんどんリークされるシステムなのだ。
それは裏を返せば、政治家にとって「大臣の椅子」は、総理にたてついてまでも手に入れたいポストだということだ。短期間であっても大臣になれば、地元では「元ホニャララ大臣を務めた」という肩書きが死ぬまでついて回る。国会議員は選挙に落ちればただの人だが、「元大臣」はさまざまな名誉職のお声がかかる。ある意味で「大臣」というのは、政治家にとって「上がり」なのだ。
では、そこでちょっと想像してほしい。何年も、何年も、大臣の座が先送りにされ、同期に追い越されたりしてきた政治家が大臣になったときの心境を。
この世の春どころか、天にも上る気持ちではないだろうか。かなり舞い上がっていることは容易に想像できる。
このように地に足がついてない人が、何十人というマスコミ記者に囲まれ、全方向から厳しい質問を受ければ、地に足のついていない回答をするのは目に見えている。
そこに加えて、このように苦節十ウン年でようやく閣僚入りした人が危ないのは、なまじ選挙を何度も勝ち抜いてきているため、マスコミ対応に関してもそれなりに「自信」を持ってしまっているということだ。
ただ、ここでこの人が勘違いをしているのは、あくまで一国会議員としてのマスコミ対応だということだ。これまでは許されてきた発言が、「大臣」という立場になれば重箱の隅をつつくような感じでつるし上げられる。これまで「政府の代表」になったことがないくせに、政治家としての自信とプライドだけが肥大化してしまったので、立場に見合わない失言をしてしまう。それが(2)の「自信が裏目」ということだ。
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