「アパレル廃棄問題」から近未来の社会シフトが見えてくる:小売・流通アナリストの視点(2/4 ページ)
アパレルの売れ残り商品の廃棄処分に批判が集まっているという。衣料品の市場規模が縮小しているのに、供給量自体は増えているのが一因だ。なぜこんな事態に陥るのかといえば、各企業が過当競争を続けているということに尽きる。
情報武装で勝ち組になった新興企業
00年代以降、こうした状況を反面教師とした、さまざまな新興専門店チェーンによって、百貨店や総合スーパーのマーケットは再分割されていった。例えば、ユニクロなどのカジュアル衣料品チェーンは、情報武装によって、サプライチェーンを垂直統合することで既存チャネルを圧倒した。
この時代には、インターネット普及からスマホ、タブレットへと進む時代でもあり、データを活用とした情報システムの構築が可能になっていった。バーコードをスキャンすれば、製造、物流、在庫、販売などの各段階(製配販と略称)の、どこに何がどれだけあって、いついくら売れたのか、ということが、リアルタイムで把握できるようになった。こうしたインフラを導入して製配販の効率化とデータによる実態把握を行うことで、既存プレイヤーをはるかに上回るコストパフォーマンスを実現した。
こうした経緯によって、現在の衣料品業界をけん引する勝ち組の情報武装は、衣料品の製配販に革命的な効率化を実現したが、冒頭の話題でもある「売れ残り」削減の本源的な解決まではいかなかった。
「売れ残り=供給―販売」を管理するものであるから、供給≒販売予測がどこまで精緻にできるかということにかかってくる。しかし、消費者から事前に情報を得ることができないので、これまではPOSデータ等の過去実績に基づいて予測するのが精一杯であり、それも業界各社の過去データからの個社ごとの推測に過ぎない。商品データからでは、消費者の選択の結果は分かるが、選択の要因や背景といった、いわゆる消費者のロジックを解明、検証することはできないからだ。こうした予測の集合体と、実績の差異が売れ残りであり、その割合が5割を超えるという現在の状況は、これまでの仕組みでは需要予測はできないことを示している証左でもあろう。
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