ウェンディーズ×ファーストキッチン イマイチだった両者のコラボ店が人気の理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/5 ページ)
「ファーストキッチン」と「ウェンディーズ」がコラボした業態が売り上げを伸ばしている。2015年から始めたこの取り組みは成功を重ね、わずか3年で40店も増えた。快進撃の秘密を探る。
両者の強みを融合
当初、比嘉氏は、女性をターゲットとしており、ファストカジュアル(米国でメジャーなレストラン業態で、ファストフードとファミレスの中間業態)のハンバーガー店としてウェンディーズを確立させようとしていたと見受けられる。実際、再上陸1号店となる表参道店では、フォアグラを使った高級ハンバーガーなどを販売していた。一方で、以前から人気のあったチリビーンズをしっかり復活させ、従来の男性のファン維持にも努めた。
しかし、このやり方はうまくいかなかった。根強い男性ハンバーガーファンは獲得できたものの、カフェ需要が弱く、ランチとディナーの間のアイドルタイムに顧客が入らないという悩みを抱えていた。
一方で、1977年にサントリーが設立したファーストキッチンは、ハンバーガーの売り上げこそ増えていなかったが、パスタ、フレーバーポテト、デザード、フロートなどのサイドメニューに強く、女性客とカフェ需要に強みを持っていた。マクドナルドなど他チェーンと差別化するために脱ハンバーバーガー化を進めたため、サイドメニューに光るものがあったのだ。
つまり、ウェンディーズは「男性客」「質の高いハンバーガー」「チリビーンズ」というようにがっつりした食事に強い。一方のファーストキッチンは、「女性客」「サイドメニュー」「アイドルタイム」のカフェ利用に強い。男女比はウェンディーズが6:4ほどで、ファーストキッチンは逆に3:7ほど。合体させれば、互いの弱点を補完し合い強みを生かせる、どの時間帯、どんな顧客でも集客できる可能性が高い強力なチェーンとなったのである。なんという奇跡だろうか。
ライバル会社の社長が移籍
そして、もう1つの奇跡が起きた。2016年にフレッシュネスバーガーを展開するフレッシュネスでそれまで社長として敏腕をふるっていた紫関修氏が、ファーストキッチンの新社長として迎えられたことだ。ライバル会社の社長が入社するとは、予想外の展開である。
紫関氏は日本マクドナルドの出身で、日米のハンバーガービジネスに精通するプロ経営者である。フレッシュネスはユニマットの傘下にあったが、ユニマットグループがコロワイドに売却。コロワイドは子会社に仕入れ先を指定してくるので、企画に縛りができてしまう。買収劇の中で弾き出されてしまったらしい。
紫関氏がフレッシュネス時代に企画・販売した期間限定のハンバーガーで印象に残るのは、アラスカ産のズワイ蟹を使ったクラブケーキバーガーである。日本にはエビを使ったハンバーガーはあっても、クラブケーキを使ったハンバーガーはなく、初めての試みであった。また、ウェンディーズに移ってからも、期間限定商品で、日本初の発酵熟成肉製造技術「エイジングシート」を使用した発酵熟成肉黒毛和牛バーガーの商品化に成功している。
このような思い切った商品は、コストパフォーマンス優先のコロワイドではNGだろう。
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