上からも下からも攻めるトヨタ:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/3 ページ)
トヨタは2つの発表をした。1つは「KINTO」と呼ばれる「愛車サブスクリプションサービス」。もう1つは販売チャネルの組織改革だ。ここから一体トヨタのどんな戦略が見えてくるのだろうか?
チャネル併売体制へ
さて、そのもう1つ。販売チャネルの組織改革について説明したい。一言で言えば全チャネル併売体制への移行だ。
トヨタは少し前から、従来の販売チャネルごとに異なる取り扱い車両を扱う販売方法から、全てのチャネルで全てのトヨタ車を扱う形に向けてジリジリと寄せてきた。ピークの00年には60車名あったモデル数は現在では40車名。これを25年までに30車名に減らし、トヨタの4チャネルで全て併売する。タイミング的には22〜25年度の間を目処に、全チャネル併売体制へと移行する。
トヨタ国内販売事業本部の長田准常務によれば、「従来の全国一律で販売戦略を立てる方法を止め、地域ごとに特性に合った形に変えていくべきだと考え、18年1月から地域本部にオペレーションの軸を移しました」と言う。つまりこれまでは車種ごとに戦略を変え、全国一律のやり方で営業を進めてきたが、今後は商品ではなく地域ごとにやり方を変え、「脱全国、町一番のお店作り」にシフトしていくことになる。
さらに、全て直営店で構成されている東京のディーラーネットワークを「トヨタモビリティ東京」1ブランドに統一し、従来のトヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店が融合されることになる。
となれば、それはやがて東京に右へならえで全国全てそうなるだろうと普通は考えるところだが、トヨタの考えは違う。トヨタのエリア販売ネットワークはそれぞれ地域の独立資本であり、別の会社だ。政治的にもこれを1つにするのは難しい。全チャネル併売体制へ移行しつつも、東京以外では4チャネルの名前を残すことにした。しかしそれは苦肉の策ではない。むしろそこにこそトヨタの戦略の核が潜んでいるのだ。
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