バイトが長く働く鍵は「初日の受け入れ方」:現場で行うべき基本の4ステップ(4/4 ページ)
新人アルバイト・パートを迎える初日の受け入れ体制や初期トレーニングのあり方は、アルバイト・パートの採用後の定着やモチベーションを大きく左右します。本稿ではそのために基本となる4つのステップを紹介します。
ステップ4:現場にあるノウハウを集めたマニュアルの整備
ステップ2で紹介した事前準備において、初日の説明を効率的・効果的にするため、マニュアルを用意して手渡している会社もあります。マニュアルの整備は、現場のノウハウの共有にもつながるというメリットもあります。
難しく考える必要はありません。「マニュアル」はゼロから作るものではないからです。現場で行われている基本的な手続きや業務、スキルやノウハウを洗い出し、文字や図、動画に起こせば立派なマニュアルが完成します。現場の状況に即して作るため、形骸化しない、現場で生きるマニュアルに仕上がります。
中には、特定の店舗で活躍しているエキスパート人材のノウハウが、近隣の店舗で横展開されているようなことがあります。こういった場合、エキスパート人材にヒアリングするだけで、サービスの質向上につながる素晴らしい要素が豊富に出てくる可能性があります。まだマニュアルを整備していない会社は、ぜひ試してみていただければと思います。
不安を解消し、働くことに前向きになれるような初期トレーニングになっているか
アルバイト・パートの新人に、長期間、モチベーション高く働いてもらうには、まず第1・第2ステップとして、初日に歓迎されている実感を持たせるような受け入れ方をすること、そして不安を解消し、翌日からスムーズに働き始められるように事前準備を整えてあげることを挙げました。
第3ステップでは、働き始めた後は早い段階で、小さくても成功体験を意識的に積ませること。そして第4ステップとして、初期のトレーニングを効率的・効果的に行うためにマニュアルの整備が重要であることをご紹介しました。
アルバイト・パートとして働く人が多い飲食や小売、アパレル、運輸業といった業界において、アルバイト・パートの方が働く現場はビジネスの最前線であることがほとんどです。ビジネスの最前線で働いているアルバイト・パートの方に対するトレーニングを怠ることはクレームにつながり、やがては会社やブランドの失墜につながります。だからこそ経営判断として、トレーニングへの投資を充実させるべきなのです。
モチベーション高く、長期間働き続けてくれるアルバイト・パートの方が増えれば、サービスの質も向上します。これを機に、現場での受け入れ方やトレーニングのあり方が現状のままでよいのか、ぜひ一度見直してみてください。
著者プロフィール
日比谷勉(ひびや つとむ)
パーソル総合研究所 フィールドHRラボ責任者/エバンジェリスト
日本マクドナルドの採用部門の責任者として、さまざまな新しい採用戦略を実施し、計100万人のアルバイト・パート採用を推進。2018年4月、株式会社パーソル総合研究所入社。"現場"のアルバイト・パート領域に特化した調査・研究・コンサルティングを行う「フィールドHRラボ」を設立。ラボの責任者であるとともに、エバンジェリストを務める。
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