北海道にとって「働き方改革」は利点だらけ?:地元出身社長が白熱議論(1/2 ページ)
新しい働き方は北海道にどのような影響を与えるのか――。「ワークシフト」をテーマに、共に北海道出身である、うるるの星知也社長と、サツドラホールディングスの富山浩樹社長がパネルディスカッションを行った。そこで語られたこととは。
地方創生、地域活性化に向けた取り組みとして、札幌市を舞台にした大規模なイベント「No Maps 2018 Sapporo Creative Convention」が10月10日〜14日に開催された。
No Mapsは、ビジネスにとどまらず、音楽やアート、文化などさまざまなジャンルが融合したイベント。米国テキサス州オースティンで毎年開催される「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」を目指しており、経済産業省をはじめ、行政や民間企業、学術機関などが後押しする。
ビジネスカンファレンスが開かれた札幌駅前の会場では、連日数多くのセッションが行われた。10月11日午後には「北海道の働き方改革」をトピックスに、クラウドソーシング事業を手掛けるうるる(東京都中央区)の星知也社長と、北海道を中心にドラッグストアを展開するサツドラホールディングス(HD)の富山浩樹社長がパネルディスカッションした。
ブラック企業は立ち行かなくなる
うるるは現在、東京に本社オフィスを構えるが、2001年に札幌で創業した会社で、星社長を含む役員4人が北海道出身。17年3月に東証マザーズに上場し、18年3月期の売上高は約19億円。クラウドワーカーを活用したビジネスマッチングサービスやデータ入力代行サービス、全国の官公庁や自治体などの入札情報を一括検索・管理できる業務支援サービスなどを提供する。
サツドラHDは、国内外で200店舗以上のドラッグストアや調剤薬局を運営するサッポロドラッグストアーをはじめ、AI(人工知能)ソリューション開発事業のAI TOKYO LAB、約170万ユーザーを抱える地域ポイントサービス「EZOCA」を提供するリージョナルマーケティングなど、事業を多角展開する。
この両社のトップは10年後の世の中の働き方についてどのように考えるのか。
星社長は「労働者は超売り手市場となり、人々が働く環境は良くなっていく」と予測する。15年の国勢調査によると、日本の生産年齢(15〜64歳)人口は7728万人。これが65年には4529万人と、およそ3000万人も減少する。こうした状況に向かっていく中で、企業は女性や高齢者、さらには外国人も労働力として取り込み、いかにして彼らに働いてもらうかを真剣に考えなければならないという。
加えて、AIやロボットを活用して生産性を高めることも当たり前のようになっていくだろうと予測する。
「ブラック企業などは立ち行かなくなる。人々の働き方に合わせて事業も変えていかないといけない」と星社長は話す。そうしたときに在宅ワーカーも今以上に一般化するはずだという。
10年後の働き方について、富山社長は「外的報酬」(給与、昇進など)と「内的報酬」(やりがい、ワークライフバランスなど)を引き合いに出し、「これからは時間をどう過ごすかが求められる時代に。カネよりもやりがいが選ばれ、それを提供できる企業に人は集まるのではないか」と述べる。
そうした中でサツドラHDは、従業員の多様な働き方を支援する施策を打ち出している。例えば、パラレルキャリアを推進する「オープンイノベーション制度」、副業兼業制度や在宅ワーク、雇用区分変更の「カエル制度」、退職者の復帰を承認する「Welcome Back制度」など枚挙にいとまがない。
「人と企業のかかわりは変化し、相互拘束から相互選択へ。企業も従業員もお互いに選ばれ続ける存在になることが、今後の労働力確保につながる」(富山社長)
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