北海道にとって「働き方改革」は利点だらけ?:地元出身社長が白熱議論(2/2 ページ)
新しい働き方は北海道にどのような影響を与えるのか――。「ワークシフト」をテーマに、共に北海道出身である、うるるの星知也社長と、サツドラホールディングスの富山浩樹社長がパネルディスカッションを行った。そこで語られたこととは。
北海道にアドバンテージ
では、こうした働き方の変化は地方都市である北海道にどのような影響を与えるのだろうか。
北海道で住み続けたい、あるいは住みたいと考える人はいるものの、仕事がないという理由で断念する人は少なくないという。「住みたい場所と面白い仕事が一致していないのが現状だ。けれどもインターネットを使った在宅ワークによって、ほかの地域から仕事を持ってくることができるようになった。これからは東京一極集中ではなく、地域のニーズが高まるだろうし、そうした中で北海道は利点がたくさんある」と富山社長は力を込める。
星社長も同調し、クラウドで場所や時間にとらわれない働き方をすれば、東京の企業から任された仕事を北海道で行うことも可能だという。そうなれば、とりわけ賃金面でメリットが大きい。
厚生労働省によると、2018年10月時点の最低賃金時間額は、北海道が835円で、全国平均の874円を下回る。特に東京の985円とは150円も差がある。
うるるが在宅ワーカーに提供する案件のほとんどは東京の企業が発注先なので、北海道にいながらも高い賃金水準で仕事ができるのだという。
加えて、北海道には自宅から職場までの移動距離が長くて時間がかかってしまう人もいるほか、冬場は交通が止まってしまうほど大雪が降る。「家で仕事ができるのは価値がある。自分たちのライフスタイルに合わせて働けるのだ」と星社長は強調する。
今後ますます個の力が問われるようになり、企業や組織に属さない働き方がより一般化すれば、人々は仕事がある場所よりも、生活しやすい場所に視点が向くはずだ。そうしたときに、他の地域と比べて自然や食材が豊かで、住環境にも恵まれている北海道のアドバンテージは大きいと、両社長は口をそろえる。
働き方改革のヒントは北海道にあるのかもしれない。
(取材協力:うるる)
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