「人肉レストラン」一気に拡散 フェイクニュースにだまされる大人たち:世界を読み解くニュース・サロン(1/5 ページ)
「ベジタリアンに人肉を提供して殺人が発覚」。こんな記事が配信された。うそだったのだが、このフェイクニュースは広く拡散してしまった。すぐ身近にあるフェイクニュースにだまされないためにどうすればいいのか。米カリフォルニア州の取り組みが参考になる。
先日、おぞましい記事を目にした。
タイトルは「ベジタリアンに人肉を提供して殺人が発覚」。ニューズウィーク日本版のWebサイトに掲載された記事で、要約すると、タイの首都バンコクにあるベジタリアン・レストランで肉を出されたと怒った客が警察を連れて店に戻ると、その肉がそこで殺された人の肉片だったと判明したというものだった。
このグロテスクな記事は人気だったようで、何日もサイト内の記事ランキングで1位になっていた。
しかし、このニュースが先日、うそであることがタイ警察の発表で明らかになった。そう、フェイクニュースだったのである。日本でも、そのニュースがフェイクだったとする記事をハフポスト日本版が掲載している。
この記事はもともとニューズウィークの英語版サイトに掲載されたもので、シンガポールのニュースサイトを引用してまとめたものだった。だがそのニューズウィークの記事には、読者が早々と「この記事はフェイクニュースだよ」とコメントしていたのだが、今も記事は掲載されたままだ。
いずれにせよ、日本ではこのニューズウィーク日本版の記事を大勢が目にした。コメント欄が活発なサイトであるYahoo!ニュースにも配信され、680件以上ものコメントが付いていた。さらにトップのコメントには1万2000件近いリアクションがあった。
実は記事には一応、「カニバリズム(人肉食い)の話はたまに現れるが、必ずしも信ぴょう性は高くない」という1文があるのだが、コメント欄を見る限り、この記事の信ぴょう性を疑っている声は少ない。
一方、この記事をフェイクニュースと報じたハフポスト日本版の記事には、Yahoo!ニュースで50件ほどのコメントと、350件ほどのリアクションしか付いていない。つまり、おそらく多くの読者が最初の記事だけしか読んでいない可能性がある。
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