「人肉レストラン」一気に拡散 フェイクニュースにだまされる大人たち:世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)
「ベジタリアンに人肉を提供して殺人が発覚」。こんな記事が配信された。うそだったのだが、このフェイクニュースは広く拡散してしまった。すぐ身近にあるフェイクニュースにだまされないためにどうすればいいのか。米カリフォルニア州の取り組みが参考になる。
「準備ができていない」のは、子供だけではない
カリフォルニア州の法律では、州の教育委員会が、カリキュラムやテキストなどの教材、学生を評価する基準を決めて学校に通知することになる。つまり、授業の一環として、メディア・リテラシーをきっちり教える。また教師も、メディア・リテラシーを教えるための研修を受けなければならない。
このように、カリフォルニア州はフェイクニュースを危険視し、子供に教える教科として本気の対策に乗り出すつもりなのである。
ただ、この「情報を見る準備ができていない」という指摘は、決して子供にだけ当てはまるのではない。大人だって同じなのではないだろうか。ちなみに米国では、調査会社のギャラップの調査によると、成人の47%が「メディアにバイアスがありすぎて事実を見極めにくい」と答えている。
これは自戒の念を込めて言うが、何よりもメディア側がフェイク情報を出さないよう事実確認の強化が必要だというのは大前提である。以前なら、出版物に載せてしまうと修正が大変なため、校閲の工程で事実関係などをチェックした。だが後で修正できてしまうインターネットの時代には、それが軽視されてしまっている。そうした時代の変化もフェイクニュースが広がる背景にはある。だからといって、チェックをおろそかにしていいというわけではないのだが。
その上で言うが、消費する側の大人がだまされないためには、まずはカリフォルニア州と同じロジックで、ネット時代のニュースの見方を知る必要があるのではないか。つまり「準備」をする必要がある。
そんなこと言われなくても分かっている、という人もいるだろう。掲載サイトを確認したり、記事の情報元に当たってみたり、執筆者についてチェックしたりと、それぐらいはしていると。
関連記事
- シリアから解放の安田氏に問われる、ジャーナリストとしての“2つの姿勢”
シリアで武装組織に拘束されていた日本人ジャーナリストが解放された。世界的なベテランジャーナリストに見解を聞くと、ジャーナリストとしての「姿勢」について指摘していた。安田氏に欠けていた姿勢とは? - 「才能ある貧乏」と「無能な金持ち」はどちらが成功する? 浮かび上がった不都合な事実
遺伝子から子供の才能を調査し、育つ家庭の裕福度によって学歴がどう変わるかを明らかにした研究が話題になっている。「才能」と「環境」のどちらが将来を決めるのか。その結果から、現代社会の問題も浮き彫りになった。 - 「米粒スパイチップ」だけじゃない 中国に“情報を盗まれる”恐怖
米大手企業に対する中国のハッキング疑惑が報じられ、話題になった。しかし、その手口はこれまでも世界中で行われてきたサイバー工作だ。中国があの手この手で実践してきた、ターゲットが気付かないうちに膨大な情報を盗み出す手法とは…… - フェイクニュース対策は「言論統制」に利用されてしまうのか
FacebookなどのSNSを悪用したフェイクニュース対策として、国内の言論統制を強化しようとする国が出てきている。法規制が強まると、言論弾圧につながる可能性もある。表現の自由を保障しながらフェイクニュース拡散を防ぐには、どうしたらいいのか。 - まるで本物 「ディープフェイク」動画の危険性
欧米で新たなテクノロジーを使ったフェイクニュースが出現している。それは、実在の有名人を使って偽物の動画を作成する「ディープフェイク」だ。その危険性とは……
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.