電話営業の会話をデータ解析して判明した「デキる営業」の法則とは:大事なのは根性や粘り強さじゃない?(2/2 ページ)
人材会社のレバレジーズが電話営業の会話内容を分析。優秀な営業マンの会話のコツを解明した。相手の体を気遣うなど顧客への細やかな配慮が目立つ結果に。
なぜその情報を勧めるのか「根拠」も説明
阪上さんが実際に「ハイ」の営業担当に話を聞いたところ、転職希望者から以前の職場がどこか聞きだした上で「あそこの職場はこういう点が大変でしたよね」などと会話をつなぐことで、彼らの気持ちにうまく共感しているのだという。「営業が転職希望者への共感を表明することで『私の職場を知っているんだ』と感じてもらい、上手に信頼関係を築くことができるようだ」(阪上さん)。
他にも、優秀な営業は転職希望者にある情報を説明する際に、その理由や根拠をきちんと意味づけして説明している人が多かった。「趣旨としては〜」「理由としては〜」といった言葉がよく使われていたという。「営業が、今その転職情報が浮上しているという理由だけで転職希望者に提供しているのか、それとも相手に適した仕事だから勧めているのか、電話のやりとりだけだと不信感が募りやすいようだ。営業側の情報を押し付けるだけでなく、背景も説明することで顧客はより納得できると考えられる」(阪上さん)。
新人教育向けに客観的な営業ノウハウを
同社がこうした電話営業の会話分析を進めている背景には、どうしても属人的になりやすい営業スタイルの向上を図る狙いがある。さらに事業規模の拡大によって、18年には採用した新卒約230人のうち200人ほどが営業に配属されるなど、新人教育の手間が急増していることも大きいという。阪上さんも「(ベテラン社員も)営業で自分が何をしゃべっているのかを社内で共有することは難しい。暗黙知を(文章や図表で表せる)形式知にする場が求められていた」と指摘する。データで客観的に効果を説明できる営業ノウハウならば説得力もあり、社内教育に適していると考えた。
同社ではこうした分析結果から得られた営業ノウハウを、実際に現場の研修などに取り入れようとしている。ただ課題も無いわけではない。優秀な営業が実践していた「顧客の経歴をまず聞く会話スタイル」については、「聞き出した職場が営業担当者の全く知らない所だった場合、『ああそうですか』としか返答できない。これはある程度熟練した営業でないと打ち返せない可能性がある」(阪上さん)とみる。得られたノウハウを新人からベテランまで全営業に適用できるかは未知数ともいえる。
同社では、全社の電話営業に範囲を広げて会話内容を分析しさらに多くの知見を得ようと、低コストで音声データをテキストに変換して分析する技術の導入も模索している。会社によっては「勘と経験」、あるいは「根性」といった主観的な尺度で良しあしが決められがちだった営業業務の真のコツが、データ解析で突き止められる日も遠くないかもしれない。
関連記事
- 勝手に“天職”を見つけ出す転職AIがすごい
転職活動をしてもいない人にスカウトのメールが届くscoutyが威力を発揮している。ネット上の個人情報を収集、AIが分析して企業とマッチングする。 - 超売り手市場なのに「事務職志望の女子学生」があぶれる理由
空前の売り手市場の中で7月の女子内定率が減少。銀行などで事務職採用が急減したのが原因。依然として事務職希望の女子大生が多いこともある。 - 患者1000人以上がかかりつけ レジェンド薬剤師が貫く仕事の作法
患者の薬全般の指導を請け負う「かかりつけ薬剤師」の中でも1000人以上を担当する“レジェンド”な女性が日本調剤にいる。秘訣は患者に寄り添い心を開かせる接客にあった。 - 「単純労働」は淘汰されない 「AIで仕事がなくなる」論のウソ
「今後15年で今ある仕事の49%がAIによって消滅する」。野村総合研究所は2015年に衝撃的なレポートを出した。それから3年たった今、実際に起こっているのは「人手不足」である。AIによって私たちの働き方はどのように変わるのか。気鋭の雇用ジャーナリストが解き明かす。 - AIがライバルに!? 城繁幸さんに聞くHR Tech時代の人事サバイブ術
人事コンサルタントで作家の城繁幸さんがHR Techで日本の人事がどう変わるかを語った。AIが判断するため人事から人事権が無くなる一方、アナログな役割が重要になるとみる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.