東芝のラジカセが売れている背景に何が? 企画担当者に聞く:あの会社のこの商品(3/5 ページ)
東芝エルートレーディングのCDラジカセ「Aurex TY-AK1」が売れている。50代から多くの支持を集めているわけだが、どのような機能が搭載されているのか。同社の開発担当者に話を聞いた。
非ハイレゾ音源をハイレゾ相当にアップコンバート
思い出がよみがえってくるほどの高音質は当初、高性能のスピーカーとアンプで実現するつもりだった。ところが、この構想でベンチマークすべきものが現在存在しない。そこで、高音質が明確に定義されているハイレゾ化をターゲットにした。
「思い出は『良い音だったはずだ』と自分に都合よく覚えているもの。だから、良い音を再現しなければいけない」と堀越氏。カセットテープやCD、ラジオといった非ハイレゾ音源をアップコンバートしてハイレゾ相当の音質に高め、ハイレゾ音源を再生できるツイーター搭載のスピーカーとアンプを搭載することにした。
非ハイレゾ音源をハイレゾ相当にアップコンバートする技術は、同社から東芝の液晶テレビ「REGZA」の音響面の開発を担当する部隊に委託した。
ハイレゾは高音域の狭いカセットテープと違い、人間の耳には聞こえない周波数40キロヘルツの高音まで再生できる。従って、音に奥行きがある。
堀越氏の立場からすると、ハイレゾであることが分かるように高音を強調してほしいという思いがあったが、技術者たちは自然な音にすることを選択した。そこで、音を聞き慣れているオーディオ評論家に試聴してもらい、音づくりの方向性を確認しながら開発を進めることにした。
音づくりは、データ収集と試聴の繰り返し。無響室で測定した結果から判明した音の特性と原音と比較し、物足りないところなどをソフトウェアエンジニアが修正。そして、修正した音を測定して得られた特性を原音と比較する。この作業を繰り返すわけだが、全体のバランスが取れた自然な音にするのに1年近くの時間を要した。
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